過激派組織「イスラム国」による日本人人質事件をめぐり、警視庁などが「人質強要処罰法」違反の疑いがあるとして、捜査を始めたことがわかった。
報道によると、警視庁と千葉県警は、事実関係が固まるまでは同法の「加重人質強要」の容疑などで捜査を進め、被害状況によっては、より重い規定を適用して捜査する方針だという。
この「人質強要処罰法」は耳慣れない法律だが、いったいどんな犯罪を対象にしているのだろうか。西口竜司弁護士に聞いた。
●「加重人質強要罪」とは?
「多くの方が聞き慣れない法律だと思います。人質強要処罰法は、1977年に日本赤軍が起こしたダッカ日航機ハイジャック事件を受けて作られました。
2004年にイラクで起きた日本人人質事件や、同じ年に起きた上信越道のバスジャック事件などで適用されていますが、適用ケースは珍しいと言えます」
その人質強要処罰法の中に規定されている「加重人質強要罪」は、どんな犯罪なのだろうか?
「加重人質強要罪は、人質強要処罰法の第2条に定められていて、次のような内容です。
『2人以上で共同して凶器を示し、人を逮捕・監禁した者が、これを人質にして、第三者に対して、義務のない行為をすることや権利を行使しないことを要求すること』
このような行為をおこなった者に対して、無期または5年以上の懲役を科しています。
2人以上で共同して、さらに凶器を用いて、人を逮捕・監禁すること。そのうえでさらに、誰かに何らかの不当な要求を行うことが要件です。
今回のように『イスラム国』という組織が、刃物や銃を使って後藤氏らを人質にとり、家族・日本に対し身代金を要求するという行為は、この犯罪にあたります」
●国外犯にも適用可能だが・・・
今回は、国外で起きた事件だが・・・。適用できるのだろうか?
「加重人質強要罪は法律上は、国外犯にも適用できることになっています。
しかし現実問題として、日本の警察がイスラム国の支配地域に出向いて、現地で捜査をすることは困難ですから、国家として出来得る範囲のことをしているということでしょう。
個人的には、何とか今回の問題が解決されることを祈るばかりです」
西口弁護士はこのように述べていた。