「オミクロン株ワクチン超危険!」「オミクロン株ワクチン超有害!」と書かれたビラを商業施設の出入口などに貼ったとして、愛知県警一宮署は12月13日、軽犯罪法違反(はり札行為)の疑いで、30代の男性を書類送検した。報道によると、男性はSNSでワクチンに反対する活動をしており、許可を取らずにビラを貼ったことを認めているという。
あまり聞きなれない罪名ではあるが、なぜ、軽犯罪法違反(はり札行為)とされたのか。建造物侵入罪にはあたらないのか。坂口靖弁護士に聞いた。
●軽犯罪法違反での処罰「非常に多い」
坂口弁護士は「ビラ貼り行為」について「裁判例などを検索してみても、今回の件と同様に軽犯罪法違反で処罰を受けている事案は非常に多い」と説明する。
「軽犯罪法は、拘留(1日以上30日未満の拘置)または科料(1000円以上1万円未満の金銭の徴収)という非常に軽い刑罰が規定されている法律で、反社会性が軽度な行為を処罰する側面があります。
ビラ貼り行為は、表現の自由の行使という側面もあります。また、被害の程度も、(建物などの)外観がビラが貼られている間のみ多少害されるという軽微なものに留まります。そのため、実務上、極めて軽い刑罰を規定している軽犯罪法で、多くの事案に対応しているものと考えられます」
●悪質な事案は「建造物侵入罪」にもあたりうる
今回のビラは、商業施設の出入口などに貼られたという。商業施設の建物内や敷地内に入ったうえで、建物内の柱にビラを貼った場合、建造物侵入罪(刑法130条)は成立しないのだろうか。
「建造物侵入における『侵入』は『管理者の意思に反する立ち入り』のことを指すと考えられています。ビラ貼り目的の商業施設への立ち入りにおいても、商業施設の管理者の意思に反するものと評価できると考えることが可能であるようにも思われます。
しかし、商業施設においては、買い物客をはじめとして、商品を見に来ただけの客や、涼みに来た客、トイレを使用する目的の客など、かならずしも購入希望者のみの立ち入りを認めているわけではありません。
このように、事実上は、目的の内容にかかわらず、自由に出入りを認めていると考えられることからすると、今回の事案においても、原則的には、建造物侵入罪の成立を認めることはできない(少なくとも管理者の意思に反する侵入が認められない)と考えるのが妥当だと思われます。実務上、万引き犯に対しても、建造物侵入等の罪での逮捕や起訴はしていないことも同様の理由によるものと考えられます」
ただし、坂口弁護士によると、建造物侵入の「侵入」について「管理権者の意思は周囲の状況から合理的に判断されるもので足りる」という判断を示している裁判例(「大槌郵便局ビラ貼り事件(昭和58年4月8日最高裁判決)」など)もあるという。
「今回の事案においても『大量のビラや大きなビラ、わいせつなビラ等を貼る目的であった』とか『以前にも注意を受けているにもかかわらず、繰り返していた』などの事情が存在しているような悪質な事案であるような場合においては、建造物侵入罪が成立し、同罪で有罪となるということも十分にあり得るものと考えられます」