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歌舞伎町「立ちんぼ公園」で見た異様な光景 「トー横キッズ」も流れてくる?
師走の歌舞伎町(2022年12月中旬/富岡悠希撮影)

歌舞伎町「立ちんぼ公園」で見た異様な光景 「トー横キッズ」も流れてくる?

新宿・歌舞伎町の一角にある「大久保公園」周辺が今、かつてなく賑わっている。路上で客引きをする女性が今秋以降、外国人も含めて急増しているのだ。常時、十数人の女性が立つ状態となり、男性が続々と吸い寄せられている。

さらには「冷やかし」に加えて、無断撮影者もいて、さながら「売春観光地」の様相も見せている。異常な光景になっていることから、「買春男性の取り締まりを検討するべき」という声も上がる。(ジャーナリスト・富岡悠希)

●冬にもかかわらず「ホットスポット」となっている

大久保公園周辺では、立っている女性に男性が話しかけている姿を目撃できる(2022年12月上旬/富岡悠希撮影) 大久保公園周辺では、立っている女性に男性が話しかけている姿を目撃できる(2022年12月上旬/富岡悠希撮影)

12月上旬の週末の夜、JR新宿駅から徒歩10分程度にある大久保公園に向かう。手袋とマフラーを着用し、ロングコートを羽織ったが、かなり寒い。

到着した目的地は、外気温と異なり、男女のホットスポットだった。

数メートルおきに立っている女性に対して、男性が次々と声をかけていく。値段や行為内容を交渉するためだ。そうした様子を少し離れた場所から眺めている男性も、複数目についた。

20代とみられる男性3人のグループが通りかかる。「お前、あっちの子に声かけてみろよ」「酒飲んでるのだから、勢いでいけるっしょ」。そんな会話を交わしていた。

別の通りに出ると、外国人女性が数人並んでいた。そのうちの1人は、長身で彫りがかなり深い。同地に集う女性たちを支援するNPO法人「レスキュー・ハブ」代表の坂本新さん(51)は「ブラジル系やシンガポールなどの東南アジア出身者がいるようです」と話す。

筆者は1年半ほど前、坂本さんの「夜回り」に同行した。その後も取材を続けてきたが、この夜ほど男女ともに人出が多かったことはなかった。

大久保公園はイベント開催が多い。「激辛グルメ祭り」や「やきいもフェス」はテレビの情報番組でも取り上げられていたが、まったく違う顔だった。

●冷やかしや無断撮影も増えて「カオス化」が進んでいる

4年ほど前から、路上で生計を立てている20代女性のユウミさんも、変化を感じている1人だ。

「買う気もない『冷やかし軍団』は、やめてほしい。こっちだって、暇じゃない。お前らを相手にしている間、ほかの客を取れないのがわからないかな」

さらに嫌なのが「無断撮影者」だ。男性が増えると共にSNSなどを中心に大久保公園に関する情報発信が増えている。すると、一帯を歩きながら撮影した動画などが、YouTubeにアップされるようになった。

顔へのモザイク処理もしていないことから、映った女性が特定できる。「まじで、いい加減にしろと言いたい」(ユウミさん)。画像として切り取られて、拡散する懸念もある。

坂本さんのNPOを手伝っている女性スタッフが映りこんだこともあった。YouTubeに該当箇所の削除申請をしたところ、丸々1本削除されたという。

「彼女(女性スタッフ)は『ちょっとマスクを取ってよ』『靴下を売ってください』などと言われたこともあります。風紀の悪化を感じます」(坂本さん)

●新規客は相場を掴みきれていない

ここ最近、カオス化が進んでいるが、経験値の高いユウミさんにとっては、プラスの側面もある。新しい男性客が増えるにしたがって、客単価を引き上げることが可能になったからだ。

ユウミさんは路上に立つとき、2、3人の客を相手にして、3、4万円を稼ぐ。月の家賃分を確保したあとは、体調や気分次第で立つようにしている。

2020年以降、新型コロナウイルスの流行で、世の中は一斉に「巣ごもり生活」に入った。一部のホスト店は売上を維持し続けたとされるが、歌舞伎町の人出は激減した。大久保公園も同様だったが、それでも常連客はやってきた。

彼らは相場をわかっているから、必要以上に金を支払わない。しかも、ほかの男性客が少ないことから、足元を見透かして値切ってきた。

今の新規客はネット情報頼りで、相場を掴みきれていない。ユウミさんは、男性に値段を言わせる「営業スタイル」だ。そのため、1人5千円〜1万円程度、高い値段を提示している。その分、稼げるという構図だ。

●検挙されても再び戻ってきてしまう女性たち

しかし、ユウミさんら一部女性にプラス面があるにしても、大久保公園がここまで賑わうのは異常事態と言える。

警察はもちろん、手をこまねいているわけではない。適宜、取り締まりをおこなってきたが、単に検挙するだけでは、ほかに行く場所がない女性は再び戻ってきてしまう。

そのため、このイタチごっこを断ち切る試みに乗り出した。捜査員らが女性を指導し、福祉窓口につなげ、女性保護施設や生活保護の申請につなげようとしていると報じられている。

現場で女性を支援している坂本さんは、警察以上に危機感を強めている。これまでは女性の生活苦や路上からの立ち直しを助けてきたが、買い手である男性客にも目を向け始めた。

NPO法人「レスキュー・ハブ」代表の坂本新さん(2022年12月上旬/富岡悠希撮影) NPO法人「レスキュー・ハブ」代表の坂本新さん(2022年12月上旬/富岡悠希撮影)

●支援NPOは「若い女性」が増えてきたことを懸念

買い手側の「買春」行為は、売春防止法で禁止されているものの、罰則は定められていない。そのため、取り締まりはおこなわれていない。

この現状を疑問視する坂本さんは、次のように提言する。

「『買春』行為への罰則規定を導入し、買春者への取り締まりを検討すべきではないでしょうか。大久保公園では、売春者は女性、買春者は男性の構図です。罰則対象になったならば、こんなに堂々と男性は女性を買いに来ないでしょう」

「女性の生計の手段を奪うことになることから、同時に女性への支援を強化する必要があります。一定期間、たとえば3年程度を1つの区切りとして住居を提供し、職業訓練につなげる。さまざまな理由で職業訓練や就労も難しければ、生活保護など、別の公的支援に頼ります」

「最近は、10代後半から20代前半の若い女性も増えてきました。歌舞伎町にたむろする『トー横キッズ』からも流れて来ていると見立てています。大久保公園は、女性たちにとって『ここに来ればどうにかなる』場所でした。それを『ここに来れば立ち直れる』場所にしていきたいです」

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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