女性がトイレを我慢している姿を見ると興奮する――。そんな嗜好をもったタクシー運転手が「暴行」と「監禁」の疑いで大阪府警に逮捕されたことが報じられ、話題になっている。
報道によると、この40代の男性運転手は昨年10月、大阪府内で乗車した20代の女性客に、利尿剤を混ぜた菓子を食べさせたとされる。その後、女性がトイレに寄るよう求めたのに聞き入れず、約1時間40分にわたって高速道路を走行し、車内で女性を失禁させた疑いが持たれている。
こうした行為が犯罪として検挙されるのは当然だと考えられるが、一般的な「暴行」や「監禁」とは異なる気がする。なぜ運転手はこの容疑で逮捕されたのだろうか。小野智彦弁護士に聞いた。
●「暴行」の範囲は非常に広い
「一般的に暴行といえば、殴る蹴るが典型です。しかし刑法上の暴行は、『身体に向けられた不法な有形力の行使』とされていて、それにあたる行為の範囲は、非常に広いと考えられています。
たとえば下剤を飲ませる行為も、人間の生理的機能を害する危険性のある行為として、暴行にあたることがあります」
今回の事件では、どこが暴行容疑の部分なのだろうか。
「今回の事件に当てはめると、女性客に利尿剤を混ぜた菓子を食べさせたという部分が、暴行の容疑になります。
利尿作用を促進させるということは、いわば下剤を飲ませることと似ており、人の生理的機能を必要以上に促進させる、つまり身体の生理的機能を害する行為になりうるからです。
なお、刑法の暴行罪は、『暴行を加えたけれども傷害に至らなかった場合』と定義されていて、実際に身体の生理的機能を害したならば、傷害罪になります」
●「監禁」のための手段に制限はない
それでは、「監禁」容疑のほうはどうだろうか?
「刑法の『監禁罪』は、人を一定の限られた場所から脱出できなくしたり、脱出を著しく困難にすることで、場所移動の自由を制限することです。
わかりやすいのは、力ずくで人を部屋などに閉じこめるような場合だと思いますが、法律上、監禁するための手段に制限はありません。
たとえば、女性が温泉に入っている隙に洋服などを持ち去り、浴場から外へ出られないようにしてしまうことも、『監禁』になります」
そうすると車を止めずに走り続けることも、「監禁」になる?
「高速道路を走行中のタクシーから脱出したければ、車から飛び降りるしかありませんね。しかし、そんなことは現実的ではありません。
つまり、運転手はタクシーの車内から乗客が脱出できない状況を作りだしたといえますから、まさに『監禁』に当たるわけです」
小野弁護士はこのように説明していた。