2020年02月27日 15時00分

少年法の適用年齢「18歳未満」引き下げ、日弁連が反対する根拠は?

少年法の適用年齢「18歳未満」引き下げ、日弁連が反対する根拠は?
山﨑健一弁護士(2月17日、東京・霞が関の弁護士会館)

政府は少年法の適用年齢を「20歳未満」から「18歳未満」に引き下げる同法改正案について、今国会への提出を見送る方針を固めた(朝日新聞1月26日などの報道による)。引き下げについては賛否両論あり、現在も議論は続いている。

日本弁護士連合会(日弁連)は、2月17日に報道機関向けのセミナーを開催。法制審議会(法制審)の議論状況について説明した。

●18・19歳の少年犯罪の現状は?

少年犯罪は凶悪化・増加しているという声もあるが、はたしてそうなのだろうか。

『警察白書(令和元年版)』によると、刑法犯少年の検挙人員は年々減少傾向にある(2018年は23489人)。

画像タイトル 刑法犯少年の検挙人員の推移(参考:警察白書)

法改正された場合に、少年法の対象外となる18・19歳の少年が起こす事件の内訳をみると、「自動車運転過失致傷」がもっとも多く、ついで「道路交通法」違反、「窃盗」となっている(2018年・検察統計による)。「凶悪」とされる「殺人」(未遂を含む)は約0.04%だ。

また、少年事件のうち、18・19歳の少年が占める割合は約半数(2018年・検察統計による)。少年院送致となった少年も約半数が18・19歳だ(2018年・少年矯正統計による)。

●少年法の適用年齢が引き下げられたら?

成人であれば、「責任主義」により、刑罰が科されることとなる。しかし、少年法は「健全育成」を目的とし、「保護主義」を理念とするものだ。そのため、教育の観点から、少年には「保護処分」が付されることとなる。

手続きも成人とは異なる。14歳以上の少年は「全件送致主義」により、原則としてすべて家庭裁判所に送られる。家庭裁判所が「刑事処分が相当」と判断した場合は、検察官送致(逆送)されることになる。

画像タイトル 少年事件の主な手続き

少年院では、法務教官が少年を監督・指導し、生活面をはじめ、さまざまな教育をおこなっている。また、保護処分を受けずに手続きが終わる「審判不開始」や「不処分」となった場合でも、親への指導など教育的な措置がおこなわれることが少なくない。

少年法の適用年齢が引き下げられれば、18・19歳による事件の多くは「起訴猶予」となることが指摘されている。そうなると、「起訴猶予」で終了してしまい、その後の教育的な働きかけはおこなわれなくなる。

しかし、成人であれば服役しないような事件でも少年院に送致されることもある。また、少年院は成績評価により進級するシステムとなっており、進級し続けなければ出院できないことから、むしろ「厳しい」とする意見もある。

●新たに示された「別案」

これまでの法制審の議論では、単純に年齢を引き下げて「成人」と同じ処遇をおこなうのではなく、18・19歳に対する処遇内容を充実させることなどが議論されてきた。また、「起訴猶予」となる事案に対しては、家庭裁判所の審判で調査や鑑別を経て、保護観察処分などをくだす「若年者に対する新たな処分」も検討されてきた。

山﨑健一弁護士(法制審議会少年法・刑事法部会委員)によると、審議では新たに「別案」が提示されたという。モデルとして示されたのは、以下の2つの案だ。

【甲案】(「成人」寄りの案) 18・19歳の「一定の事件」は検察官が直接起訴し、それ以外の事件は検察官が家庭裁判所に送致する。送られた事件が「刑事処分相当」であれば、家庭裁判所は検察官送致し、「一定の事件」は原則として検察官送致する。

【乙案】(「少年」寄りの案) 18・19歳の事案すべてを検察官が家庭裁判所に送致する。「一定の事件」は必要的に検察官送致する(あるいは必要的検察官送致は設けない)。

山﨑弁護士の説明によると、「別案」は18・19歳を「17歳以下」や「20歳以上」とは異なる「中間層」として位置づけたうえで、「若年者に対する新たな処分」の対象範囲を拡大するものとなっている。

しかし、「別案」には賛同できないと山﨑弁護士は語る。その理由は「あくまで少年法の適用年齢を引き下げることを前提としている」ためだ。

また、「若年者に対する新たな処分」は「行為責任の範囲でのみ認める立場となっている」ため、「ぐ犯」(保護者の正当な監督に服しない性癖や不良交際があるなど、性格・環境などからみて、将来、犯罪または刑罰法令に触れる行為をするおそれがある少年)が対象にならないなどの問題があるという。

●引き下げに賛成・反対する声

少年法の適用年齢を引き下げることに賛成する立場からは、民法が「成年」年齢を引き下げたことが挙げられている。また、「選挙権」を与えたのに、罪を犯したときには保護の対象とするのは不整合だという意見もある。

産経新聞(1月30日)などの報道によると、「少年犯罪被害当事者の会」(武るり子代表)が1月30日、引き下げに賛成する意見書を法務省の川原隆司刑事局長に手渡している。

一方、日弁連は2018年11月21日に『少年法における「少年」の年齢を18歳未満とすることに反対する意見書』を公表。少年犯罪は増加も凶悪化もしていないこと、現行の少年法制は有効に機能していること、適用年齢は法律の目的ごとに検討すべきであることなどを反対の理由として挙げている。

また、2019年6月13日には、日弁連を含めた15団体が山下貴司法務大臣(当時)に宛てて、引き下げに反対する意見書を提出した。元家庭裁判所調査官や元少年院長、保護司などのほか、少年事件の被害者からも反対の意見が上がっている。

法制審の審議は、少なくとも7月ごろまで続く見通しだという。

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