冬がやってきた。スキーやスノーボードを車に乗せて、ウィンタースポーツに出かけようと計画している人も多いだろう。
ところが、新潟県内のスキー場でインストラクターをしているNさんは、冬のシーズン中、県外ナンバーの車が、上り坂で立ち往生したり、凍結路で滑って事故を起こしているところを頻繁に見かけるという。
車が立ち往生してしまってから、あわててノーマルタイヤにチェーンを巻こうと悪戦苦闘しているケースも少なくない。地元民からすれば「ノーマルなんて常識はずれ」だが、年に数回訪れるだけだと、ついつい油断をしてしまうのかもしれない。
雪道をノーマルタイヤで走ることが危険なのは言うまでもないが、これは道路交通法違反になるのだろうか。また事故を起こしたときに、損害賠償責任が重くなったりもするのだろうか。雪国の北海道で開業する吉原美智世弁護士に聞いた。
●「反則金」ではなく「刑罰」が科される場合も
「積雪や凍結のある道路において、自動車や原動機付自転車を運転する場合のルールは、道路交通法71条6号にもとづき、都道府県の公安委員会が具体的に定めています。
北海道公安委員会は、運転手の遵守事項として、『スノータイヤを全車輪に装着し、またはタイヤ・チェーンを取り付ける等滑り止めの措置を講ずること』と定めています」
吉原弁護士は北海道を例に挙げて、こう説明する。内容に地域差はあるが、こうした雪道を走行する場合のルールは、沖縄を除く各地に存在するようだ。
こうしたケースでは、いわゆる反則行為(公安委員会順守事項違反)として処理される場合と、刑事手続がなされる場合があるようだ。場合によっては刑罰もありうるのだろうか?
「たとえば反則金を納めなかったり、逃亡しようとして逮捕されたりした場合などは、道路交通法120条1項9号により、5万円以下の罰金に処せられる可能性があります。なお、罰金は『刑罰』です。5万円以下だからと言って軽視してはいけません」
この罰金は、速度制限オーバーなどの際の「反則金」とは性質が異なり、「刑事罰」になるため、より深刻に捉えたほうが良いということだ。
●「過失割合」の高い事故を起こしやすくなる
では、もし事故を起こしてしまった場合、雪道対策をしていなかったことは、損害賠償の額にも影響するのだろうか?
「そもそもの話ですが、自動車事故で他人に損害を与えた場合には、民事上の損害賠償責任が発生します。
自動車事故は一般的に、双方に過失があるケースが多く、お互いの『過失割合』によって、自分が支払う賠償金額が変わってきます。
積雪道路や凍結道路でスノータイヤを装着しないで走行すると、たとえば、スリップして対向車線にはみ出て対向車に衝突したり、停止できずに前の車に追突したり、過失割合の高い事故を起こす危険が高くなります」
この「過失割合」が高ければ、それだけ多くの賠償金を支払うことになる。対策が不十分だと、最終的に、高い賠償金を支払うことに結びつきやすいということだろう。
吉原弁護士は「交通事故は自分だけで済む問題ではありません。人身事故を起こした場合には、自動車運転過失致死傷罪に問われる可能性もあります」として、雪道対策の重要性を強調していた。
【追記】記事中に説明不足な点がありましたので、説明を追加し、一部の表現を変更いたしました(2014年1月9日14時55分)