スーパーのタイムセールなどでよく見かける「半額シール」。埼玉県内の大型商業施設では、別の商品から剥がしたシールを貼り替えて店員をだまし、販売価格の半額しか支払わずに商品を受け取った疑いで、東京都内の男性が詐欺容疑で逮捕された。
報道によると、男性は、この商業施設で販売されていたおもちゃ3個(計9000円相当)に、「半額シール」を貼り替えたという。防犯カメラの映像や支払いに使ったクレジットカードから、この男性が浮上した。男性は「落ちていた半額シールを貼り直しただけで、だますつもりはなかった」と容疑を否認しているという。
もし「半額シール」を意図的に貼り替えた場合、どのような理由で詐欺罪になるのだろうか。吉田要介弁護士に聴いた。
●人をだまして商品を取得している
「一般的に詐欺というと、人をだまして高額商品を買わせたり、価値のないものにお金を払わせたりする犯罪という印象を抱く人が多いでしょう。しかし、今回のケースのように、人をだまして安く物を買うのも詐欺に当たります」
それはなぜだろうか。
「詐欺罪は、人を欺いて財物を交付させる犯罪です(刑法246条)。『欺いて』というは、人を錯誤に陥らせる行為をすること、つまり、だますということです。その手段や方法に制限はありませんから、人をだますものであれば、無言の動作であったとしても構いません。
また、相手が勘違いをしていて、それを正す告知義務がある場合、その勘違いを正さない(黙っている)ことが、だますことにあたります。たとえば、お釣りを多く渡されたのに、それをわかりつつ黙って受け取る行為が、釣り銭詐欺として詐欺罪になるのです」
では、半額シールの場合も同じ理由が当てはまるのだろうか。
「『半額シール』を意図的に貼り替える行為は、その商品を見た人にその商品が「半額」であるとだますことです。もっとも、「半額シール」を貼り替える行為そのものは、業務妨害罪が成立する可能性がありますが、商品を取得していない(財物の交付がない)ので、詐欺罪は成立しないと思われます。
『半額シール』が貼られた商品をレジに持って行き、その商品を半額で購入することで、詐欺罪が成立します。レジの店員(人)を、その商品が半額であると『欺いて』、商品(財物)を販売(交付)させたといえるからです」
吉田弁護士はこのように話していた。