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出向先の仕事は「ラベル貼り」 リコー技術者への「出向命令」が無効とされたワケ
「出向」にまつわるルールとは?

出向先の仕事は「ラベル貼り」 リコー技術者への「出向命令」が無効とされたワケ

大手メーカー「リコー」が従業員2人に命じた子会社への出向に、裁判所が「NO」を突きつけた。東京地裁は11月12日、この出向命令が「人事権の濫用により無効」という判断を下したのだ。

報道によると、2人は技術職として採用され、研究開発に関わってきた40代と50代の男性。2011年7月に同社が実施した「希望退職」への応募を求められ、断ると同年9月に物流子会社への出向を命じられた。子会社では、製品のラベル貼りや箱詰めの仕事に従事しているという。

リコーは即日控訴したというが、この判決では、なぜ出向が無効とされたのだろうか。判断のポイントを会社の人事・労務管理にくわしい波多野進弁護士に聞いた。

●出向にまつわるルールは労働契約法で明文化されている

「出向とは、もとの企業に在籍したまま、他の企業で労務の提供を行うことです。労働者への影響も大きく、場合によっては労働者にとって不利益になります。

出向命令が有効かどうかは、しばしば裁判でも争われ、『無効』とされる例も出てきました。そこで、2008年施行の労働契約法で、そのルールが明文化されたのです」

波多野弁護士はこのように指摘する。どんな風に書かれているのだろうか。

「労働契約法14条は、『使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする』としています」

裁判所が「権利の濫用」があったかどうかを判断する際のポイントは、(1)出向の必要性と(2)人選の合理性の2つとなるようだ。今回のケースに当てはめて考えると、どうだろうか。

●技術者にラベル貼りをさせるのは「不合理」

「今回は、長年研究開発に従事してきた技術者の方々が、出向先で製品のラベル貼りや箱詰作業をさせられているというケースです。

技術者としてのキャリアや能力と、こうした作業の間に関係性が全くないことは、誰がみても明らかです。人選の合理性はありません。

判決が、技術者の方々を自主退職に追い込むのが出向の目的だったと判断したのは、この点が重視されたからではないかと考えられます」

今回の判決はこうした点を踏まえて、「出向命令は人事権の濫用により無効」としたのだろう。波多野弁護士は「この東京地裁判決は、極めて当然の判断を行ったと考えます」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

波多野 進
波多野 進(はたの すすむ)弁護士 同心法律事務所
弁護士登録以来、10年以上の間、過労死・過労自殺(自死)・労災事故事件(労災・労災民事賠償)や解雇、残業代にまつわる労働事件に数多く取り組んでいる。

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