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社員の「ストレスチェック」義務化へ――働く者が「不利益」を受ける恐れはないか?
過度なストレスは、過労うつ発症の引き金になりかねない

社員の「ストレスチェック」義務化へ――働く者が「不利益」を受ける恐れはないか?

労働者が抱えるストレスの程度を調べる「ストレスチェック」の実施が、今年12月から、社員50人以上の企業に義務づけられることになった。過剰なストレスを抱える労働者を早期発見し、メンタル面での不調を予防することを目指す。今年12月施行の改正労働安全衛生法(昨年6月成立)に盛り込まれた。

ストレスチェックは、労働者がチェックシートに記入し、医師や保健師等が検査する。検査結果は本人に直接通知されるが、本人の同意があれば、企業へも通知される。また、高ストレスを抱えた労働者から申し出があった場合、医師による面接指導が実施される。面接指導の結果を受け、企業は残業制限や配置転換などの「就業上の措置」を行う。

「過労うつ」が社会問題になる中で、労働者のストレス減少につながるとして、制度を歓迎する声は大きい。その一方で、チェックの結果によっては、かえって不利な扱いを受けるのではないかと心配する声が、労働者の中にはある。

ストレスチェックの義務化をどう見るか。過労死問題に取り組む岩井羊一弁護士に聞いた。

●ストレスチェックは「心の健康診断」

「従来から、身体の健康診断は義務化されていましたが、心の健康診断はまだでした。限界があるとは言われていますが、労働者のストレスを早期発見できるため、意味のある制度だと思います。

労働者が仕事のストレスから病気になり、使用者の責任が問われるようなケースでは、使用者がストレスチェックを適性に実施していたかどうかも、重要な判断材料となるでしょう」

逆に、ストレスチェックの結果しだいで、労働者が望まない配置転換などの不利益を受けるおそれはないのだろうか。

「たしかに、病気ではない労働者が病気だとされて、不利に取扱われるなどの弊害も心配です。そうした弊害を、適正な運用によって防ぐべきです」

おかしな運用がなされないよう、社会で見守っていくべきと言えそうだ。

●「原因」対策も必要

この制度の導入は、過労うつなどを防ぐため、どこまでの効果があるのだろうか。

「原因を放置したままだと、いくらストレスチェックを実施しても、真の問題解決にはなりません。

メンタルの問題が起きないようにするためには、その原因となる長時間労働やパワーハラスメント等をなくす対策が必要です。

中でも問題なのは、長時間労働の法規制が不十分な点です。しかし現在は、むしろ過重労働を助長し、過労死や過労自殺を促進する危険性を持っている『残業代ゼロ制度』の導入が検討されています。『残業代ゼロ制度』には絶対反対です」

岩井弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

岩井 羊一
岩井 羊一(いわい よういち)弁護士 岩井羊一法律事務所
過労死弁護団全国連絡会議幹事、日弁連刑事弁護センター副委員長 愛知県弁護士会刑事弁護委員会 副委員長

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