高速道路を「逆走」して、交通事故などに至ったケースが、2011年からの3年間で541件に及び、そのうち370件で運転していたのが65歳以上の高齢者だったことがわかった。認知症の疑いがあったケースが37パーセントにのぼるという。NEXCO東日本など高速道路6社が9月に公表した資料で明らかになった。
高齢ドライバーが起こす自動車事故は、以前から問題視されている。警察庁交通局運転免許課の資料によると、65歳以上の高齢運転者の死亡事故は、16歳〜24歳の若者に次いで高い割合を示している。
高齢ドライバーによる交通事故の特徴は、どんなものだろうか。また、どんな事故対策が求められるのだろうか。交通事故にくわしい前島申長弁護士に聞いた。
●高齢ドライバーの事故はなぜ起こるのか?
「高齢ドライバーによる事故で最も多いのは、日中、比較的小さな交差点での出会い頭の事故です。
高齢者が外出する時間帯は夜間より日中が多く、また近所への買い物・通院など、近距離の運転が多いため、家の近くにあるような小さな交差点で事故が起きやすいのでしょう。
その他、アクセル・ブレーキを誤って操作したことによる事故や、高速道路での逆走などが指摘されています」
前島弁護士はこのように説明する。こうした事故は、なぜ起きるのだろうか。
「高齢ドライバーの事故原因としては、一時不停止と安全不確認が最も多いです。これは加齢により視力や聴力、筋力が低下し、とっさの判断ができなくなるためです。
出会い頭の事故の原因になりやすい信号無視は、視力が低下して赤信号を見落とすことで起こります。ちなみに、高齢者がわざと信号を無視するケースはほとんど見られません。
また、とっさの判断力の低下は、アクセルの誤操作による事故や、高速道路の逆走を引き起こします」
●事故をなくすためには?
高齢ドライバーの事故を減らすためには、どのような対策が必要なのだろうか。
「高齢ドライバーの事故対策として、各都道府県とも免許の『自主返納制度』を設けています。
また、70歳以上の高齢ドライバーに義務付けられている高齢者講習も有効です。これは実車や座学などをまじえた3時間程度の講習で、受講するともらえる証明書は、免許更新の際に必要になります。
これ以上高齢者ドライバーの事故を増やさないために、今後は、地域のサークル活動などを通じて、加齢による身体能力の低下と安全意識について、より積極的に伝えていく必要があるでしょう」
前島弁護士はこのように話していた。