石川 清隆 弁護士 インタビュー
弁護士を目指したきっかけ
私は早稲田の政治経済学部出身なのですが、大学で学んでいる時から考古学、哲学などが好きでした。ですので、学生時代はそれらが好きなことからそういった本ばかり読んでいて、特に何かをしようと思いはありませんでした。
ところが友達に誘われたのをきっかけに法律が面白そうだと思い、留年をしまして、5年生の春から司法試験の勉強を始めました。当時は早稲田に法職課程というのがありまして、司法試験の対策をしてくれる講座なのですが、私はそこに通いながら勉強をしていました。そこでは司法試験に合格した方が教えてくれたり、また人のつながりができたりして非常に有意義な講座でしたね。
勉強の面では、私は経済を勉強していたので法律は全く学んだ事がなかったのですが、哲学の本や、マルクスが好きだったのでその本を読んでいた事が法解釈において役に立ちました。というのも、法社会学におけるマルクス主義的な解釈論で革命を起こすといった考え方(これが正しいとは思えませんでしたが)や、不平等性の是正を知っていることは、所有権絶対性、私的自治など法解釈において、すごく入りやすかったからです。それまで法律の講義は聴いた事もありませんでしたが、ハンディキャップはあまり感じませんでしたね。
京大の中山研一教授が出版記念で刑法総論各論を講義してくれたのが、初めて聞いた法解釈講義で、ひたすら感動していました。ですので、ざっくり言えば興味を持ったものが段々とシフトしていき資格を持ち自分で食べていける資格が欲しいなと思い、度重なる不合格の結果にもめげず4度目の司法試験において、28歳にしてやっと合格して今に至ります。
今改めて考えてみて、親には迷惑をかけたと思います。ご近所から「おたくのお子さんは就職はどこに決まりましたの?」と聞かれて「弁護士を目指していて・・」と毎回言わなくてはならず、我慢していた親の気持ちを考えると申し訳なかったです(笑)。
司法修習を終えた後
私は修習が東弁なのですが、当時の修習生というのは法律事務所に訪問し事務所紹介をしてもらうといったことをしていて、その際、私が東弁でお世話になっていた先生というから「私のところへ来ないか」というおすすめを頂きました。
他にも事務所訪問し、労働法をご専門としている和田良一先生の事務所に訪問し、お誘いいただいたので、その後、和田先生からもうちの事務所に来ないかとお誘いを頂きました。しかし先にも述べた通り、私は当時東弁の先生からもお約束を既に頂いていたので、その旨を伝えたところ、どうやら和田先生は東弁の先生をご存知だったようで「私の名前を出してみなさい」と言われました。
そして後日事情をすべて東弁の先生に話してみると、和田先生は研修所の教官であった、「和田先生は労働法の権威とも言えるお方だ。和田先生のところに是非行きなさい」と言われたため、結局労働法はなにも知らないにも関わらず私は和田先生の事務所に入所することになりました。最初はひたすら労働法の本を読んで、1年間は先輩の仕事を見る事が仕事でした。
印象に残っている案件(事件)
労働法を専門とする私にとって専門外ではあるのですが、紹介で一般民事事件が必ず来ます。主なものは親子問題、家族問題等です。ケースによっては、相談を受けているうちにほろっとくるような話を聞くような時もありますね。
まだ覚えているのですけど、奥さんによる浮気が原因でご夫婦で喧嘩をしてしまい、それでご主人が娘を置いて出て行けといったら、奥さんが去り際に「あの子はあなたの子ではない、種無しすいか!」と言って出て行った。それにより、子供が親を本当の子供の顔をして騙してきた、とご主人がさらに逆上し、親子関係不存在云々という事を調べてきて相談してきたケースがありました。
私はとりあえずご主人を落ち着かせて、後日娘さんを呼んで話を聞きました。こういう事情でお父さんは怒っているけど事実関係はどうなのかということを聞いたところ、「昔から知っています。しかし私の父はあの父しかおりません。よろしくお願いします」と言われ、もう「分かった」としか言えませんでした。あの娘さんの堂々とした態度には非常に感銘を受けたため、印象に残っています。
長く仕事をする上で変化したこと
学生時代は、マルクス・レーニン主義について信仰の様な憧憬の念を抱くひとたちがいてそれはまだ未来があるという感じでしたが、後にソ連が崩壊したとき以降には労働組合側の思想の是非という問題でなく指導理念が無くなってしまったと感じました。
つまり、どうすべきか、何のために組合が経済闘争を行っているのかという部分が曖昧になっており、上手い言葉が見当たりませんが脆弱になってしまっていると感じます。
マルクス主義であれどうであれいいですが、基本的な部分である理念が無いので、最近は組合の幹部と話していてもつまらないです。以前は「マルクス主義をもっと読んでこい!」と言った感じで、そういった面白い掛け合いが出来たものでした。つまり昔は組合側の基本的な理念がまだしっかりしていたので何を考えているかといったことがわかり、本音で話せる部分があったのですが、このごろはよくわからないというのが本音です。
弁護士としての信条・ポリシー
そうですね、興味を持った事についてはとことん勉強するということですね。それは主に雑学ですが、仕事上でそういった知識も役に立つ場面があります。例えばご依頼者様と話しているときたまたま鉄道模型の配線の話になり、実は学生時代に配線をハンダ付けしたり調整をするバイトをしていたので、その辺の知識はかなりあったんですよ。
そういった知識が仕事をスムーズに進める上での助けになる事もあるので、雑学は仕事をする上で役に立ちます。
関心のある分野
それは専門という事もありやはり労働法ですね。学生時代は先にも述べた通りゼミで特定の法律分野を専攻していたわけでもないので、特にその頃から関心のある法律分野もなかったですね。
ですが政治経済学部出身なので、ケインズや近代経済だけでなくマルクスの本も多く読んでいた事から経済は好きですし、哲学・考古学など法律とはあまり関係ないですが、そういった分野は好きです。
今後のビジョン
そろそろ事務所に若い人に入って頂きたいという希望があり、今実際に仕事を手伝ってもらっているので、仕事を引き継いでもらいたいです。そもそも弁護士という職業柄定年が無いことから75くらいまではみなさんやられるので、まぁそこから先は体力的にちょっときついので分からないですが(笑)、とりあえず75までは現役で続けたいと思います。
その後は、私はガーデニングが趣味なのですが、友達の遺産相続の事件を担当し、山の土地が手に入ったのでそこに小さな小屋を建てて10年程ガーデニングを行っていたので、今は仕事の関係でやっていませんが、再開したいですね。
また余談ですが、鉄道模型も趣味の1つなのですが、アウトドア用のレールを森の中に300メートル以上敷き詰めて5歳になる息子と遊んでいた時は、「精神年齢が同じ」と奥さんに言われてしまいました(笑)。
「ワーキングプア」についての意見
新市場原理と謳って製造派遣を行っていますが、あれは私は社会政策的に堕落だと思います。なぜかいうと、製造派遣において社会的投資と教育費がかかっている人材を、そういうことに潰してしまうことがもったいないからです。
また、ワーキングプアの問題は、定職に就かないで生きてゆくという人がいる場合にそれは成長しない労働力と言えます。以前内定取り消しで訴訟を起こし、最高裁まで続くという事件がありましたが、結局裁判に勝ったのは原告が36歳の時でした。その場合同期で会社に入った者はもう課長クラスですよね、そこにいきなり入ったとしても、それまでのOJTが全くない訳ですから、いくら権利の主張を貫いたとはいえ現実的に物事を考えてなさすぎると思います。
つまり、このケースにも見られる通り、自分で学歴まではとったけど社会訓練という上では全然努力をしていない、つまり半分くらいは自業自得なのではないかと思います。ワードエクセルもできない、ペーパーも書けないというような人は会社がとらないのは当たり前でしょう。そういった本人自身の問題もかなりあると思います。