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「裁判所」は遠きにありて思うもの――「アクセスの壁」をどう超える? 新潟でシンポ
サミットでは、若手弁護士が寸劇を演じる一幕もあった

「裁判所」は遠きにありて思うもの――「アクセスの壁」をどう超える? 新潟でシンポ

司法にまつわる地方特有の問題について、各地の弁護士が集まって考える「弁護士会支部サミット」が2月14日、新潟県長岡市で開かれた。新潟県は、面積が5番目に広い都道府県ということに加え、全国有数の豪雪地帯を抱えていて、裁判所へのアクセスが課題の一つだ。そんなこともあり、「裁判所が遠い」という問題をどう解決するかが、議論の中心となった。

●「豪雪」でさらに遠くなる裁判所

会場となった長岡市には、新潟地方裁判所の「長岡支部」がある。しかし、周辺の地域から長岡支部までたどり着くことが難しいケースもあるという。長岡市から車で約1時間の南魚沼市を拠点に活動する渡邉真一郎弁護士は、この地域では「豪雪」が裁判所へのアクセスを悪くしていると指摘した。

「雪がすごく降っているときに、高速道路を使って長岡の裁判所に行かなければならないことがあった。吹雪くと、右も左もわからなくなる。どこを走っているか、わからない。いまにも激突するのではないかと思っていた」

このとき渡邉弁護士は、10時開始の調停にギリギリ間に合ったが、肝心の当事者が、雪のせいで1時間も遅れて到着したそうだ。

車が使えない住民は、裁判所に行くのがもっと大変だ。在来線は1時間に1本程度で、バスとの乗り継ぎもよくない。渡邉弁護士は「電車が雪で止まることもしばしばだ」と話す。

●もっと「出張所」を活用すべき

長岡市の西にある柏崎市の職員で、生活困窮者の支援や後見申し立ての業務にあたる大塚真光子さんは「柏崎から長岡までは車で1時間だが、後見の申し立ては高齢の人が多い。移動が難しいこともある」と語る。雪がなく、アクセスが比較的スムーズな春夏でも、高齢者にとっては負担が大きいと指摘する。

こうした不便を解消するカギが、柏崎や南魚沼の市内にもともとある家庭裁判所の「出張所」を活用することだという。現在、柏崎や南魚沼の出張所には裁判官が常駐しておらず、家事事件についての審理は行われていない。もし出張所で審理が行われるようになれば、利用者が長岡支部までわざわざ行く必要がなくなる。

渡邉弁護士は「出張所でいろいろな手続きができるというのが、市民にとって、利用しやすい裁判所、利用しやすい司法につながると思う」と訴えていた。

●地方の「福祉関係者」への期待

「裁判所を遠く感じる」のは、行くのに時間がかかることだけが、理由ではない。特に地方では、そもそも「弁護士に頼りたくない」「裁判をしたくない」といった「心理的ハードル」が根強くあるようだ。

渡邉弁護士は「地方だと『裁判沙汰にしたくない』という風潮がある。弁護士に会いにいったというだけで、周りから『なに?』という感じで見られる」と話す。そうしたハードルを乗り越える役割を、地域の福祉関係者に期待しているという。

柏崎市役所の大塚さんは「弁護士と市民の間に福祉関係の人が入れば、(司法が)ずっと近い存在になる思う」と協力に前向きだ。

長岡市の職員で、障害者の生活支援を行う齋藤加奈さんは「長岡市の場合、弁護士とのネットワークはあるが、DV、高齢者、生活困窮者など、それぞれの部署ごとになってしまっている」と指摘。福祉サービスの側も、横のネットワークを広げていく必要性があると話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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