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新入社員が「社員旅行」に行かないと言い出したーーイヤなら参加しなくてもいいのか?
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新入社員が「社員旅行」に行かないと言い出したーーイヤなら参加しなくてもいいのか?

「職場の新入社員が社員旅行 行かないんだが 何考えてんの?」。そんな投稿がネット上の掲示板で話題になり、社員旅行への参加は義務なのか自由なのかをめぐって、議論になった。「何考えてんの?」と憤る投稿者自身も、社員旅行に参加したくないそうだが、「義務だから行くべき」と考えているようだ。

ネットでは「行きたくないなら普通行かないだろ」という意見もあったが、「仕事はチームワークが大事」「うち社員旅行ないから羨ましいわ 飲み会も少ないしもっとコミュニケーションとりたい」といった肯定的意見もあった。職場の社員旅行に参加することは、社員の義務なのだろうか。労働問題にくわしい渡邊幹仁弁護士に聞いた。

●「慰安」「親睦」目的で強制することはできない

「まず、会社と労働者の関係が、そもそも何であるかを考えてみる必要があります。

会社と労働者の関係は、労働契約(雇用契約)により成立しています。この契約によって労働者が負う義務は、労働契約の合意内容の枠内で、労働の内容・遂行方法・場所などに関する使用者の指揮にしたがって、労働を誠実に遂行することです。

したがって、社員旅行に参加することが、このような労働の遂行といえるか、すなわち社員旅行が会社の『業務』として行われるのかどうかによって、参加する義務が生じるか否かが変わってきます」

では、社員旅行が「業務」かどうかはどうやって判断すればいいのだろうか。

「社員旅行の目的や内容が何であるかが問題となります。

慰安や親睦が目的の場合は、会社の業務ではなく、そのような社員旅行に参加することは、労働者の負うべき義務ではないと考えられます。

したがって、会社は参加を義務づけることはできませんし、参加しなかったからといって、業務上不利益に取り扱うことはできません」

たしかに、慰安目的の社員旅行が、義務として社員を苦しめるのであれば、それは本末転倒だろう。

●参加義務が生じる社員旅行とは?

「一方で、集中的に研修や会議を行うことを主な目的として社員旅行が実施される場合には、会社の業務の一環として、労働者が参加する義務が生じるケースもあるでしょう。

ただし、この場合でも、旅行が休日や夜間などの業務時間外に行われる場合(通常はそうなることが多いと思われます)には、法律上の条件をクリアしている必要があります。労働基準法36条の労使協定、いわゆる『36(サブロク)協定』が締結されていることなどです」

こうした条件が整っていたら、参加する義務が生じるということだろうか。

「条件が整っている場合であっても、業務上の必要が実質的に認められない場合は、参加を義務づけることはできません。たとえば、研修旅行とは名ばかりのもので、実際には観光や懇親を深めるためだけのものである場合などです。

また、労働者に参加できないやむを得ない理由がある場合も、参加を義務づけることはできません」

渡邊弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

渡邊 幹仁
渡邊 幹仁(わたなべ みきひと)弁護士 そらいろ法律事務所
離婚・親子関係などの家事事件、男女問題、不法行為に関する事件や、刑事事件・犯罪被害事件を数多く取り扱っている。

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