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会社の「給与明細」をネットの「退職エントリ」で公開した・・・法的に問題ないのか?
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会社の「給与明細」をネットの「退職エントリ」で公開した・・・法的に問題ないのか?

会社をやめたとき、退職に至った経緯をブログに書く人がいる。こうしたブログは「退職エントリ」と呼ばれ、外部からわからない社内の雰囲気や労働環境をうかがい知ることができるため、ネット上で人気コンテンツの一つになっている。

なかには、会社名まで公開している退職エントリもある。今年7月上旬にネット上で話題になったものは、会社名に加えて「給与明細書」まで掲載されていた。さすがに、氏名と社員番号は黒塗りになっていたが・・・。

このブログに対しては、ネット上で「会社のコンプライアンスに関わるような内容をネットで晒したら、機密保持契約違反になるんじゃないか」といった疑問の声もあがっている。給与明細を「退職エントリ」で公開することは法的に問題ないのだろうか。企業法務にくわしい鈴木謙吾弁護士に聞いた。

●会社に対する「ネガティブキャンペーン」だったら・・・

「もし、『他人』の給与明細を承諾なくブログで公開した場合、プライバシー侵害の問題になります。

一方、『自分』の給与明細を公開しているのであれば、プライバシー侵害と関係ありません。表現の自由として、許される範囲が広いと考えられるでしょう」

鈴木弁護士はこう切り出した。単に給与明細をブログで公開することは、法的に問題ないということだろうか。

「しかし、いわゆる『退職エントリ』では、自分の給与額が『いくら』という観点でのみ公開するのが目的ではなく、会社に対する『ネガティブキャンペーン』の趣旨が含まれているものがちらほらあります。

たとえば、給与明細を公開するブログの中に、『こんな安い給料でこき使われる会社はおかしくないか。業務内容も〇〇なんて』といった文章が書かれていることがあります

このような場合は、会社の名誉や評判を貶める目的の一環で、給与明細を公開しているといえます。ブログの文言から、給与明細を開示する正当性が見出せない場合、会社に対する名誉毀損や機密保持義務違反に該当しうる可能性もあると思います」

では、直接的に会社の悪口を書いていない場合はどうだろうか。

「『退職エントリ』には、さまざまな目的が混在しているので、一概には評価できませんが、暗に会社批判が示されている場合もあるでしょう。

会社にとって、保護すべき社会的評価という視点があります。また同じ会社で働いている他の従業員のプライバシーに対しても、配慮する必要があります。

あくまで自分の情報であれば、表現の自由として許される範囲は広いと考えられますが、その方法には十分な注意が必要でしょう」

鈴木弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

鈴木 謙吾
鈴木 謙吾(すずき けんご)弁護士 鈴木謙吾法律事務所
慶應義塾大学法科大学院教員。東京弁護士会所属。

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