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「危険手当つかない」「ピンハネ構造を明らかに」 福島第一原発作業員が東電を提訴
東電と下請業者を訴えた福島第一原発の現役作業員と元作業員(東京・霞が関の司法記者クラブで)

「危険手当つかない」「ピンハネ構造を明らかに」 福島第一原発作業員が東電を提訴

福島第一原発の事故処理にあたる現役作業員と元作業員、計4人が9月3日、「危険手当や残業代が支払われていない」として、東京電力と下請業者16社に約6200万円の損害賠償を求める訴えを、福島地裁におこした。

現役作業員の原告男性(50代)は、同日午後、東京・霞が関で記者会見を開き、「(月給)手取り20万円いくかいかないか。危険手当は一切ついていない」「(下請業者は)口利きするだけで危険手当を抜いている。東電を含めて改めてもらいたい」と、怒りを噛みしめるように話した。

●「保険に入れず、ケガを治療できない人もいる」

この男性は、「作業員のなかには保険に入れず、ケガをしても治療できない人がいる。住むところがなくなっても、我慢して従事しようとしている人もいる」と話し、現場の下請け作業員の置かれている、苦しい現状を訴えた。

会見に出席した元作業員の原告男性(60代)は、「周りを見ると自分は恵まれているほうだったが、同じ現場にいた人でも、(下請)業者が違うだけで収入差があった」と、労働条件が下請けによって大きく違ったことを強調した。

さらに、「危険手当はなぜ末端の作業員に行き渡らないのか。声に出したくても出せずに、陰で泣いている人がいる。その人たちのためにも、おせっかいながら、代わりに言ってあげようかな」と、原告に加わった動機を述べた。

●「ピンハネの構造を明らかにしたい」

原発作業員の人件費をめぐっては、以前から、下請業者による「ピンハネ」が問題視されている。東電は2013年、元請業者に支払う額を1日あたり1万円増やす方針を発表したが、原告側の弁護団によると、下請構造が多重化しているため、東電が元請業者に払っているはずの人件費が作業員に行き届いていないという。

弁護団の海渡雄一弁護士は、「非常に高い被ばくにさらされている作業員に、きちんと手当が支払われていないのは社会的正義にもとる」と強調。「作業員に危険手当が行きわたるように監督する責任が東電にある」としたうえで、今回の裁判を通して「ピンハネの構造を明らかにしたい」と話していた。

(弁護士ドットコムニュース)

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