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「被害者遺族の心の傷は一生続く」 少年犯罪被害者の遺族や弁護士らがシンポ
シンポジウムには少年犯罪の被害者遺族や支援弁護士らが登壇した(8月31日撮影)

「被害者遺族の心の傷は一生続く」 少年犯罪被害者の遺族や弁護士らがシンポ

150万部を売り上げた東野圭吾のベストセラー小説を原作にした韓国映画「さまよう刃」が9月6日から公開される。少年らによって、最愛の娘を凌辱され無惨に殺された父親が、「遺族」から「復讐者」に変わっていく様子と、それを追う刑事たちの葛藤を描いた作品だ。

映画のキーになるのは少年司法制度だ。日本と同じく韓国の少年法でも、重大犯罪を犯した少年が極刑に処せられることはない。そのことが娘を失った父親の絶望を、より深いものにする――。

「少年犯罪被害」を描いたこの映画の公開に合わせて、「少年犯罪被害者支援弁護士ネットワーク」は8月31日、少年犯罪被害とその司法制度のあり方について考えることをテーマに、東京都内でシンポジウムを開いた。シンポジウムには少年犯罪によって子どもを失った遺族のほか、少年犯罪被害者のサポートに長年携わってきた弁護士などが登壇した。

●裁判は「通り一辺倒の言葉で終わった」

シンポジウムでは、映画「さまよう刃」の試写会が行われた後、少年犯罪被害者の遺族らがそれぞれの思いを語った。

澤田美代子さんは2008年、息子(当時24歳)を失った。当時19歳の少年が猛スピードで運転する軽トラックにはねられたのだという。澤田さんは、少年に対して5年から10年の不定期懲役刑の判決を言い渡した裁判所に「本当にがっかりした」とうち明けた。

「(裁判官は)更生に期待するとか、通り一辺倒の言葉で裁判を終わらせた。そのことも悔しくてたまりません。被害者も加害者も出さない社会になっていくために、もっと社会で考えてもらいたいと思っています」。澤田さんはこう話し、声を詰まらせた。

●「被害感情を大切にして寄り添うことが大事」

この日のシンポジウムには、10年以上にわたって少年犯罪の被害者遺族に向き合ってきた児玉勇二弁護士が登壇した。

児玉弁護士は、「少年事件の被害者の方たちは、本当に少年がどう裁かれたか、どうなったかということが全く分からずにいます。遺族が一番知りたいことは、『なぜ我が子は死んでしまったのか』ということです」と述べ、被害者の「知る権利」が十分に保障されていない現状に苦言を呈した。

また、児玉弁護士は、被害者遺族に対する支援のあり方についても言及し、次のように述べた。

「殺された少年犯罪被害者の人たちの被害感情を大切にすべきです。映画を見て本当に私も涙しました。我が子が殺されたら、これはもう悔しいです。本当にああいう(映画の父親のような)気持ちにはなります。

被害感情を大切にして寄り添うことが大事だと考えています。被害者たちの心の傷は一生続きます。その憎しみが連鎖して、映画のように『殺す』という形になった時に、『もう、いいんだよ』と手を差し伸べることが必要です。

被害者の権利を保障しながらも、他方で、加害少年が本当に被害者の気持ちを汲みながら更生できるシステム。こうしたシステムを考え、支援することがますます重要になっていると思います」

映画「さまよう刃」は9月6日から、東京や横浜を始め、全国各地で順次公開される。

(弁護士ドットコムニュース)

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