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取調室の奥の「黒い箱」はカメラ、取り調べ「可視化」法案審議で議員が視察
再現された検察の取調室

取調室の奥の「黒い箱」はカメラ、取り調べ「可視化」法案審議で議員が視察

警察・検察による取り調べの録音録画(可視化)の義務づけなど、刑事司法改革の関連法案が国会で審議されていることを受け、衆院法務委員会の国会議員約20人が6月3日、原宿警察署と東京地検の「取調室」を視察した。このうち東京地検では、メディア取材が許可された。

可視化の義務づけは、警察・検察の取り調べに対して、自分がやってもいない罪を被疑者が「自白」する事件が相次ぎ、えん罪の温床になっていることなどから導入に向けた議論が進められてきた。法案が成立すれば、裁判員裁判対象事件と検察の独自捜査事件で逮捕・勾留された容疑者の取り調べの全過程が対象になる。

警察や検察はすでに試行的に可視化を実施しており、議員たちは東京地検で、説明用に再現された取調室を見学し、録音・録画機材について説明を受けた。黒い箱の中に入った録音・録画用のカメラが部屋の奥に置かれていたが、被疑者や検察官に録画を意識させないため、一見しただけでは分からないようになっていた。

東京地検の担当者によると、再現された取調室は、実際の取調室と広さや備品もほぼ同じ。実際の取調室は、検事と事務官が2人1組で、出勤してから帰宅まで勤務する「執務室」でもある。奥の机に検事が座っており、それと相対する形で手前側に被疑者、サイドに事務官が座る。検察官と被疑者がしたやり取りを、事務官がパソコンに入力して、供述調書をつくる。被疑者は普段、手錠と腰縄をされているが、取り調べの間は、手錠を外されるそうだ。

視察した法務委員会のメンバーには法曹出身者も多く、元検察官の山尾志桜里議員(民主)は検察官用の机に座るよう、他の議員たちに促されていた。

●議員「警察と検察で大きな開きがある」

柴山昌彦議員(自民)は視察後に次のような感想を記者たちに述べた。

「百聞は一見にしかず。さきほど視察した原宿警察署の取り調べ室と、東京地検の取調室では、様子が大きく違うと思いました。録音録画のための設備は、東京地検では常設ですが、原宿警察署では使う都度、機材を出してセットするということでした。対応が遅れていると感じました。一次的な捜査機関である警察署で、いかに録音・録画が進んでいくか、もう少し時間がかかるのかなと感じました」

一方、山尾議員は次のように語っていた。

「可視化について、警察と検察で、現状でも大きな開きがあると、率直に実感しました。検察の方が試行が先行していることもありますし、立証して有罪を勝ち取るべき立場にある検察と、その前段階の警察ということで、施設や心理の面で開きがでているのかなあと感じました。

警察にしても検察にしても、可視化の制度化に向けて準備をしていることは事実です。取り調べをオープンにする流れの中で、今回(の法案では捜査手法としての)『通信傍受』が拡大されようとしていたり、『司法取引』という可視化の対象外であるクローズドな仕組みがスタートしようとしています。

オープンな流れの中で、クローズドな制度が始まろうとしているのが、しっくりこないなと思っています。ここから先、刑事手続はどっちの方向性に向かうのか。可視化を中心に、国民にオープンにすべき所をオープンにしていく必要があるのではないかと思いました」

(弁護士ドットコムニュース)

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