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「必要とされたい」「学費がいる」――女子高生が「JK産業」に誘い込まれる理由
JK産業の実態について語る仁藤夢乃さん

「必要とされたい」「学費がいる」――女子高生が「JK産業」に誘い込まれる理由

「家や学校に居場所がなく、路上に1人でいる女の子。ほとんどの大人は、そんな彼女たちの前を素通りしますが、中には積極的に声をかける大人もいます。『援助交際を持ちかけるおじさん』と、『JK産業にあっせんするスカウトマン』です」

10代の少女の自立支援を行う「女子高生サポートセンターColabo」代表の仁藤夢乃さん(24)は10月12日、東京都内で開かれた「反貧困全国集会2014 生きぬくためにつながろう!」で、こう語った。

●「観光案内」という名目でおじさんとデート

JKとは「女子高生」を略した言葉。そして、JK産業とは、女子高生を「売り物」にしたビジネスのことで、その中には警察の摘発を受けるものもある。

「JK産業には、大きく分けて『JKリフレ』と『JKお散歩』という2つの業態があります。『JKリフレ』は、女子高生が客に室内で性的サービスを行うもの。最近、JKリフレに対する警察の取り締まりが厳しくなってきました」

仁藤さんが言うように、いわゆる「JKリフレ店」が摘発を受けたというニュースは、今年に入ってからも繰り返し報道されている。

「摘発を逃れるため、次に出てきたサービスが『JKお散歩』です。『JKお散歩』は、表向きは『観光案内』という名目で女子高生を街に立たせて、おじさんとデートさせたり、カラオケやホテルに行かせるサービスです」

お散歩というと軽い響きだが、見知らぬ男性と2人きりで行動することには当然リスクがある。実際、少女が性被害に遭うケースも少なくないという。

「秋葉原なんかでは、こうして女の子が2メートルおきに立って、おじさんに『私とお散歩どうですか?』と呼びかけています」

こう言って仁藤さんが参加者に見せた1枚の写真。そこには、夜の繁華街で道行く男性にチラシのようなものを配って客引きをする制服姿の少女たちが並んでいた。

●経済的な「貧しさ」と人間関係の「希薄さ」

女子高生ができるバイトなら、他にいくらでもある。なぜ彼女たちは、わざわざ危険なバイトに足を踏み入れるのか――。大きな要因としては、貧困の問題があるようだ。

「JK産業で働く女の子は、専門学校に行くための学費や修学旅行の費用を稼いでいる子、生活保護世帯の子もいます。給料が日払いだから、お金がすぐ手に入るんです」

JK産業で働く少女たちは、経済的な貧しさだけではなく、人と人とのつながりが希薄な「関係性の貧困」にも直面している。

「JK産業で働いている子は、こう言います。『さみしい』『必要とされたい』『誰かに自分の名前を覚えてほしい』。

親が働いていて家にいないから、誰も『おはよう』『おかえり』を言ってくれない。1日1食コンビニのおにぎりを食べられるかどうかの日が続いて、自分が生きてる意味が分からない。だから、『こんな家にいてもしょうがない。むしろ商品としてでも価値が出れば』と思ってしまうんです」

スカウトマンたちは、居場所を失い路上にたたずむそんな少女たちに『こんな所にいたら補導されちゃうよ』『寮を紹介してあげるよ』と優しい言葉をかけ、JK産業に誘い込む。

「女の子たちにとって、スカウトマンってかっこ良く見えるんです。イケてるんです。彼らが女の子に配るチラシは可愛くてオシャレ。しかも『高校中退者、中卒者、通信制高校もOK』とか、女の子を惹き付ける条件が並んでいます。だから、彼女たちはこの世界に入っていくんです」

仁藤さんはこう語る。

だが、現実は厳しい。ある家出少女が「家に泊めてあげる」という男性についていったところ、その男性がJK産業のあっせん人で、多くの少女が暮らすシェアハウスに住まわされ、売春をさせられたという実例もあるそうだ。

●少女たちには「イケてる支援」が必要

仁藤さんは、そんな少女たちの目を「こちら側」に向けるためには、彼女たちが公的な支援や学習支援を受けたいと思えるように、「大人の側も、若者がかっこいいと思える存在に変わること」「子どもたちにとって分かりやすく、『自分にもできるかも』と思えるようなアピールをしていくこと」といった「イケてる支援」が、必要なのだという。

「居場所がなくて街に1人でいる女の子の多くは、『自分と向き合ってくれる人がほしい』と思っています。一緒にご飯に行って相談に乗ったり、『何かあったら相談してね』と声をかけるだけでもいい。とにかくあらゆる大人たちから、『自分は味方だよ』というメッセージを発信し続けてほしい」

このように、仁藤さんは強く訴えていた。

(弁護士ドットコムニュース)

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