結城 祐 弁護士
お話を伺い,検察官からの勾留請求に対して,裁判官が勾留請求を却下するよう意見書と資料を用意する必要があると考えました。裁判官が,勾留の理由(法207条1項,法60条)がないと判断すれば,検察官の勾留請求は却下されて釈放されることになりますが(後述),身柄拘束されてすぐに適切な弁護活動がなされないと,原則10日間の勾留決定が出てしまいます。そして,最初の3日間で釈放できれば職場への言い訳も立ちますが,10日間も勾留されてしまえば職場への言い訳も難しくなってきます。加えて,勾留後にも不服申立て手続き(準抗告など)もありますが,ある裁判官が勾留理由があると考えて出した勾留決定を,別の裁判官が覆すのですから,相応の理由づけが必要になります。すなわち,なかなか不服申立ては認められないのです。ですから,身体拘束されてすぐに適切な弁護活動がなされて,早期に釈放される必要があります。では,勾留前の弁護活動とは何でしょうか。これについては,刑訴法上,勾留後の準抗告のようには規定が置かれておりません。しかしながら,前述の勾留の理由との関係が問題になります。すなわち,勾留の理由とは,①被疑者が定まった住居を有しないとき②(釈放されたとすれば)被疑者が罪証隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき③被疑者が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるときになります。そのため,検察官から勾留の請求があっても,勾留の理由がなければ,裁判官は勾留請求を却下することになり,被疑者は釈放されます。勾留前の弁護活動とは,この勾留の理由がないことを意見書と資料を基に裁判所に伝える作業になります。そして,事案にもよりますが,多くの事案では,①被疑者が定まった住居を有しないということはありませんし,また③被疑者が重い罪から逃れるために逃亡することも考えられません。そのため,②罪証隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるかないかを資料と共に主張することになります。特に,被疑者が証拠を本当に隠すことができるのかどうかという観点から考えることになります。上記事案に沿って考えると,被疑者が,女性の胸を触ってしまったという事案ですので,有力な証拠は女性の供述になります。そうすると,考えられる罪証隠滅行為は,その女性の供述を脅迫等によって変遷させる,すなわち脅迫によって,胸を触られたといったが嘘であった(あるいは人違いであった)と警察官や検察官に供述させることというのが考えられます。しかしながら,被疑者は,たまたま飲んでいた先で,見知らぬ女性に痴漢行為に及んでしまったので,被害者の氏名,住所,電話番号を把握しておりません(この類の事案ではそのようなことが多いと思われます。)。また,被疑者の勤務先と被害女性に加害に及んだ場所が重なることはありませんでした。そこで,私は,意見書に被害者の氏名等を知らずに出会うことはないことを,被疑者の勤務先のHPなどと合わせて,意見書を作成しました。さらに,通訳の方にも協力していただき,初回接見中に本人に書いてもらった謝罪文を通訳の方に渡し,翌日午前11時頃の2回目の接見の時に日本語訳版を受領致しました。これらを基に意見書や資料を作成し,翌々日の午前中に東京地方裁判所に提出したところ,午後3時20分には釈放になりました。このように迅速に対応した結果,逮捕から3日以内に釈放することが出来ました。なお,被害女性との間で示談が成立し,最終的には不起訴となりました。
逮捕後の弁護活動の結果早期に釈放(外国人被疑者)の
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