- 痴漢
【不同意わいせつ・同種前歴あり】逮捕当日に受任して勾留を阻止。示談成立と再発防止体制の構築により訴因を条例違反に変更させ、罰金の略式命令で終局。拘禁刑を回避し資格と職を維持した事例
相談前の状況
会社に勤務する男性の方からのご依頼でした。勤務先では一定の職責を担う立場にあり、業務との関係で国家資格の登録も有しておられました。
飲酒を伴う会合の後、深夜の帰宅途中に、公共交通機関の車内で女性の身体に触れるという行為に及んでしまいました。その場では発覚しませんでしたが、相当期間が経過した後、捜査機関が自宅を訪れ、家宅捜索を経て、不同意わいせつ罪の被疑者として逮捕されました。さらに、数年前にも同種の事件を起こし、示談成立により起訴猶予処分となった前歴がありました。
逮捕の一報を受けたご家族から、当日中にご相談をいただきました。ご要望は、身柄拘束を早く解いてほしい、勤務先に知られたくない、資格を失いたくない、という三点でした。
もっとも、置かれていた状況は極めて厳しいものでした。不同意わいせつ罪には罰金刑がなく、法定刑は拘禁刑のみです。有罪となれば、執行猶予が付いても「拘禁刑に処せられた」ことに変わりはなく、資格の登録は欠格事由に該当して失われます。加えて同種前歴がある以上、起訴猶予を得ることは通常であれば極めて困難で、実際、捜査の過程で担当検察官からも、処罰はせざるを得ないという趣旨の発言がありました。勾留されれば最長20日間の身柄拘束となり、長期の無断欠勤は事実上、勤務先に事件を露見させることを意味します。
被害者の方に取り返しのつかない被害を与えたという事実を前に、ご本人もご家族も、何から手をつければよいのか分からない状態でした。
解決への流れ
ご依頼当日に警察署で接見し、身柄の早期解放、処分の軽減、資格と職の維持という三段階で方針を設定しました。
まず身柄解放です。勾留請求までの時間が限られていたため、その日のうちに検察官および裁判官に対して勾留の必要性がないことを主張しました。結果として勾留請求はなされず、逮捕から2日で釈放され、勤務先への露見を最小限に抑えることができました。
次に被害者対応です。代理人を通じて謝罪の意思をお伝えし、交渉を重ねた結果、この種の事案の相場を大きく上回る金額での被害弁償と、宥恕文言を含む示談を成立させました。
並行して、再発防止体制の構築に取り組みました。同種前歴がある以上、反省の言葉だけでは説得力を持ちません。専門医療機関の受診と治療プログラムへの参加、断酒、家族による行動管理といった具体的な仕組みを実際に稼働させ、その状況を捜査機関に伝えていきました。
そのうえで、最終局面で交渉の枠組みを転換しました。検察官が既に処罰する方向で心証を固めている以上、起訴しないでほしいという主張は噛み合いません。そこで争点を処罰の有無から処罰の重さに置き換え、より軽い罪名への訴因変更と略式命令によることを正面から求めました。
結果として、不同意わいせつ罪ではなく迷惑防止条例違反として略式起訴され、罰金の略式命令により事件は終局しました。依頼者は拘禁刑を免れ、資格の登録も維持され、勤務先での処分も在職を前提とするものにとどまりました。
田沼 佑樹 弁護士からのコメント
この種の事案で最も重要な前提をお伝えします。不同意わいせつ罪には罰金刑がなく、法定刑は拘禁刑のみです。起訴されて有罪となれば、執行猶予が付いても多くの国家資格が欠格事由に該当し、懲戒処分の理由にもなり得ます。つまり、起訴されるか否か、起訴されるとしてどの罪名で起訴されるかが、その後の人生を分ける分岐点になります。
弁護活動の要点は4つです。
第一に、初動です。勾留の可否が決まるまでの時間は限られています。長期の身柄拘束は職場に事件を知らせることを意味し、失職すれば示談の原資も失われ、悪循環に陥ります。早期に身柄が解放されれば、ご本人が示談にも再発防止にも自ら取り組む時間が生まれます。
第二に、示談です。金額もさることながら、宥恕文言の有無が処分に与える影響は小さくありません。示談は許しを買うものではなく、被害の回復に誠実に向き合う過程です。被害者の方のお気持ちを最優先に、代理人を通じて丁寧に交渉を積み重ねる以外に道はありません。
第三に、反省から治療への転換です。前歴のある事案では、反省しているという主観的な訴えはほとんど響きません。前回も同じことを述べていたはずだ、と受け止められるからです。専門医の関与や家族による行動管理など、客観的に検証可能な仕組みを実際に動かすことが不可欠です。
第四に、交渉の枠組み自体を設計し直す発想です。検察官が処罰の方向で固まっている局面で不起訴を求め続けても議論は噛み合いません。行為態様を精査したうえで、より軽い罪名への訴因変更を正面から求める選択肢は、事案によっては極めて有効です。
見通しは事案ごとに異なり、同様の結果をお約束するものではありません。もっとも、早い段階でご相談いただくほど打てる手は多くなります。逮捕された、あるいは警察から呼び出しを受けたという段階で、できる限り早くご連絡ください。
- 営業時間
- 00:00 24:00