20年度は19億の黒字 日弁連・定期総会
6月11日に東京の弁護士会館で開かれた日本弁護士連合会の定期総会では、2020年度決算に関連して、19億円の黒字であったことなどが報告された。総会のオンライン開催や修習資金の貸与を受けた「谷間世代」などについての議論もあった。
20年度の委員会費、ウェブ開催で予算の10分の1に
2020年度の決算の報告の中で、約19億686万円の黒字となり、繰越金が約33億310万円から約52億997万円に増加したことが報告された。執行部は理由について、新型コロナウイルス感染症の拡大により、委員会がウェブ会議システムで開催されたため、委員の旅費が抑えられたことや、シンポジウムなどのイベントの中止が相次ぎ、準備費用が抑えられたことなどをあげた。委員会費の支出は、11億725万円の予算を計上したのに対し、支出は1億7077万円ほどだった。
質疑の中で栗田直弥弁護士(第一東京弁護士会)が、「今後もウェブ会議による委員会の開催を検討するべきではないか」と質問。対して、執行部は「実際に委員が集合しての開催を希望している委員会もあれば、ウェブ会議でやりたいという要望もある。ウェブ開催は今後も行なっていく方針で考えている」とした。
オンラインでの議決参加「課題が多い」
3月の臨時総会に続き、今回の総会でも、各弁護士会が用意した会場で傍聴可能なオンライン中継が行われた。出席した弁護士からは、オンライン中継の継続的な実施だけでなく、弁護士個人のパソコンでの視聴や、オンラインによる議決参加を可能にするよう求める声もあがった。
執行部は、弁護士会が用意した会場でのオンライン中継は今後も継続する方針を示した一方、個人のパソコンへの中継やオンラインでの議決参加については今後の検討課題とした。特に議決参加については「定足数の充足の確認や質疑、意見を希望する会員の確認、採決の集計方法など克服すべき課題が多い。課題の分析や検討を執行部で行う」とした。
谷間世代の格差是正「活動を地道に継続するしかない」
修習資金の貸与を受けた元司法修習生、いわゆる「谷間世代」をめぐる問題についても議論が行われた。昨年9月の定期総会で、修習資金の返還請求の停止を最高裁に求める決議案を発議した1人である山本志都弁護士(東京弁護士会)が、谷間世代の救済措置の実現に向けた活動を執行部に尋ねた。
執行部は、谷間世代に対する国費による一律給付を目指すとした従来の方針に基づいて、国会議員への要望活動を行なっているとした一方、「谷間世代が非常に不公平な扱いを受けていることは揺るぎない事実。ただ、谷間世代が不公平な扱いを受けているという事実だけで議員立法や国費による手当てができるかというと難しい」と指摘。「国会議員1人1人に理解してもらうことが重要。活動はすぐに実を結ばないかもしれないが地道に継続していく」とした。
死刑廃止で2000万円の予算計上に反対意見
2021年度予算案で、特別委員会費として「死刑廃止及び関連する刑罰制度改革実現本部」に2000万円の予算が計上されたことについて、米田龍玄弁護士(東弁)から反対意見があがった。
米田弁護士は「死刑廃止は被害者や遺族に対する人権擁護活動と正面からぶつかる。事件の遺族や、遺族を支援する弁護士にとって、死刑制度はなくてはならない」と指摘。また、2017年6月に実現本部が設置されてから、4年間で約1億円の予算が計上されたものの死刑廃止にはつながっていないとして、2021年度予算案で計上された2000万円の予算を0円にするよう求める予算の修正動議を提出した。
執行部は「被害者支援は重要な課題」としたが、今後も活動を続ける方針を示した。修正動議は修正案の提案に必要な賛成人数が集まらず、提案に至らなかった。
新型コロナの人権問題に取り組む宣言を採択
最後に、新型コロナの感染拡大が継続していることを受け、法律相談やADRなどを通じて法的課題や人権問題の解決に取り組むとした宣言案も提案された。
出席した弁護士からは、福田健次弁護士(大阪弁護士会)が「新型コロナで問題を抱えている市民に法的サービスを提供することは弁護士会や弁護士の存在感を示す上で重要だ」として、賛成を表明。
一方で、北周士弁護士(東弁)は、新型コロナのワクチン接種に関し、自治体に対して助言する「新型コロナウイルスワクチン接種に関する市区長ホットライン」を日弁連が立ち上げたことを念頭に、「自治体から相談を受ける弁護士の仕事を奪い、(弁護士の法的サービスを)無償で提供している考えている。弁護士の活動を無償化、低廉化するための根拠としてこの宣言が使われるのでないかと危惧している」と反対意見を述べた。
宣言案は賛成多数で採択された。
※画像はピクスタ(弁護士会館ビル、東京・霞が関)