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弁護士を取り巻く非弁提携の実態と弁護士会の取り組み 日本弁護士連合会 業際・非弁・非弁提携問題等対策本部 事務局長 柴垣明彦弁護士インタビュー

弁護士を取り巻く非弁提携の実態と弁護士会の取り組み 日本弁護士連合会 業際・非弁・非弁提携問題等対策本部 事務局長 柴垣明彦弁護士インタビュー

広告会社との非弁提携が疑われている東京ミネルヴァ法律事務所(第一東京弁護士会)の破産手続開始が、2020年6月24日に決定してから1年が経過した。弁護士を取り巻く非弁提携の現状や、日本弁護士連合会、弁護士会による取り組み、東京ミネルヴァ破綻の影響などを、他士業との業務範囲の問題や非弁問題などについて議論する日弁連の業際・非弁・非弁提携問題等対策本部事務局長などを務める柴垣明彦弁護士に聞いた(インタビュー日:2020年4月20日)。 (弁護士ドットコムタイムズVol.59<2021年6月発行>より)

ーー非弁提携の現状をどのように認識していますか。

非弁提携を理由とした懲戒処分の件数を調べたところ、2013年から2017年にかけて年間6〜8件の処分があり、ほとんどが東京3会(東弁、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会)や大阪などの大都市の弁護士会に所属する弁護士でした。

2017年の処分件数は8件で、東京と大阪以外では、福岡と愛媛で1件ずつあるだけでした。最近は、愛知や神奈川でも非弁提携を理由とした懲戒処分があったと聞いていますが、東京や大阪を除くと、一部の弁護士会しか事案に対応した経験がありません。

2000年代中ごろから過払金返還請求事件が増え始めるとともに、非弁提携事案も増えてきました。当初は、いわゆる「事件屋」と呼ばれる非弁業者が、高齢の弁護士を中心に提携を持ちかけるパターンでした。

東京や大阪の弁護士に集中しているのは、弁護士数が多く、引き込みやすいと思われる弁護士が孤立していて、周りからの制止圧力が掛からないことが多かったからだろうと思います。

2020年6月に東京ミネルヴァ法律事務所(以下、東京ミネルヴァ)が51億円という多額の負債を抱えて破産しました。報道のみでは広告会社との非弁提携があったのかはまだわかりませんが、全国の弁護士が「大変なことが起きた」と感じたと思います。非弁提携事案を経験したことがない弁護士会にとっては、具体的にどんな事案なのかイメージするのが難しいかもしれません。

ーー地方では非弁提携の事案がそもそもないのでしょうか。

東京や大阪と比べて件数は少ないにせよ、地方に非弁提携事案がないとは思いません。

たとえば、地元の保険代理店や接骨院、探偵などの業者から、事件の紹介を受ける事例は、東京や大阪以外でも起こりえます。紹介を受けているだけであれば問題ありませんが、紹介料を支払うなど、お金のやり取りがあれば、非弁提携になりえます。

ただ、金銭のやり取りを示す証拠を押さえることが難しいことから、非弁提携を認定するのは簡単でなく、懲戒処分の調査も難しくなります。

弁護士会は会員弁護士に対して指導・監督する権限はありますが、非弁業者に対する強制的な調査権限をもっておらず、任意で協力を求めることしかできません。弁護士の手元に証拠が残っておらず、業者も調査に応じなければ、非弁提携の証拠を見つけることはできません。そのため、その弁護士に対する依頼者自身が被害について情報提供してくれることが重要です。

東京や大阪以外にも非弁提携の事例は埋もれているのではないかと思います。弁護士会では、非弁提携がどのような形で行われているのかなどを、きちんと研修して、弁護士個人が誘いに乗らないよう注意喚起していくことが必要です。

ーー弁護士が非弁提携に陥ってしまう理由をどのように考えていますか。

「経済的に苦しい」という理由が多いのではないかと思います。以前は、新しい仕事がなくなった高齢の弁護士や、懲戒処分を受けて依頼者との契約を切らざるをえなくなった弁護士に、業者が近づき、弁護士が名義を貸すケースが多くありました。

最近では、若手の弁護士が狙われるようになってきました。まだ自らの依頼者層を形成できていない弁護士のところに、「新しいビジネスモデルを紹介する」といった誘い文句で、あたかも非弁提携ではないかのように装って、業者が近づいてきます。そのため、自分が非弁提携に陥っていることすら認識できていない弁護士もいるかもしれません。

背景には弁護士の数が増えすぎたことが一因にあるでしょう。私自身、弁護士を増やすこと自体が間違っているとは思いませんが、増加のスピードが早すぎたのかもしれません。弁護士としての業務の取り組み方や、依頼者との関係の作り方などを十分に勉強する機会がなかった若手弁護士は一定数存在します。

特に2010年前後は司法試験の合格者が2000人を超えており、当時登録した60期代前半の弁護士は、就職氷河期と言われるような厳しい状況でした。事務所に採用にされず、先輩弁護士の指導を受けることもなく、登録後すぐに独立する「即独」の形で業務を開始した弁護士も少なくありませんでした。そういった若手弁護士の中に、業者に狙われる弁護士が一定程度出てきている可能性はあると思います。

ーー2020年6月に破産した東京ミネルヴァ法律事務所は、広告会社との非弁提携が疑われていますが、どのように受け止めていますか。

単に業者が地方で過払金請求などに関する説明会を開き、提携している弁護士に事件を紹介して紹介料を受け取る。あるいは、弁護士が名義を貸して対価を受け取るという、従来の非弁提携よりも、手法が巧妙に発展しているように思います。

最近の非弁提携は、「広告料」などと称して紹介料を受け取ることで、あたかも非弁提携ではないように見せかけており、「新型非弁提携」などとも呼ばれています。

さらに、東京ミネルヴァ法律事務所と関係のあった広告会社は、関連会社が借りたテナントの転貸や、事務所スタッフの派遣なども行って、「広告料」とは違った名目でも、東京ミネルヴァから利益を吸い上げていたと言われています。

広告会社が実質的に事務所経営を支配していたとみられるかがポイントになりますが、「事務所経営をコンサルティングする」などと東京ミネルヴァの弁護士を勧誘して契約を結び、東京ミネルヴァ側も契約に合意している以上、賃貸料や派遣料も支払わざるを得ない状況だったのでしょう。

東京ミネルヴァの破産手続きが進むなか、警察や検察の捜査が行われているか分からない状況なので、当然のことですがこの広告会社が非弁業者だと断言することはできません。

今後、広告会社は受け取っていない広告料などの支払いを、東京ミネルヴァの破産管財人に求めてくる可能性があます。一方、破産管財人は東京ミネルヴァが支払った広告料などの返還を広告会社に求めることも検討することになるでしょう。

広告会社と管財人との間で裁判が始まれば、広告会社の実態がある程度明らかになる可能性もあります。

ーー非弁提携をなくすために、日弁連や弁護士会としてどのような対策ができるのでしょうか。

弁護士会としては、若手弁護士を中心に、具体的な事例を交えて非弁提携の問題を研修などで伝えるとともに、設置済みの各種相談窓口の周知が必要となります。

万が一、非弁業者と関係を結んだ場合でも、「弁護士会に相談してほしい」と伝えることも重要です。非弁提携に陥ってしまった後で、弁護士会に相談するのはハードルが高いと思いますが、非弁業者と関係を断ち切れれば、その後、弁護士会が支援することができます。関係を断ち切ろうとすると、業者側から懲戒請求や業務妨害などを受けることがありますが、弁護士会では弁護士への業務妨害について対応できる場合もあります。

実際、非弁提携をしてしまった東弁の弁護士が、「非弁業者と関係を断ち切りたい」と、東弁に支援を求めてきたことがあります。行なった事実に対して一定程度の懲戒請求をせざるを得ませんでしたが、弁護士業務を続けられるように支援をしたケースがあるのです。

また、日弁連には、他士業との業際問題や非弁問題について議論し、対応策を検討する「業際・非弁・非弁提携問題等対策本部」という組織があります。

今までは、非弁提携事例を調査した委員が少なかったため、非弁提携の問題がクローズアップされる機会は多くありませんでした。東京ミネルヴァの問題をきっかけに、今後は議論を活発化し、対応策の検討を本格化していきたいと考えています。


柴垣明彦弁護士プロフィール 

1961年8月東京生まれ、県立横浜翠嵐高等学校・早稲田大学法学部卒業。横浜市役所を経て、1992年4月東京弁護士会入会。日弁連の弁護士職務の適正化に関する委員会副委員長・事務局長、業際・非弁・非弁提携問題等対策本部事務局長や、東京弁護士会の非弁護士取締委員会委員長、市民窓口委員会委員長、非弁提携弁護士対策本部本部長などを務める。

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