分野特化型サイトが急増、相続が最多 法律事務所HP調査
【本記事は2021年1月14日に公開したものです】弁護士ドットコムが毎年行っている法律事務所のホームページ調査では、法律事務所が事務所のHPとは別に、特定の弁護分野を訴求し、依頼者にPRする目的で所持しているHPを「特化型サイト」と定義して、「離婚」「相続」「交通事故」「労働」「刑事」5分野のサイト数について、継続的に調査を実施してきた(最新の調査結果は2020年12月刊行 VOL.57に掲載)。「特化型サイト」も2019年から2020年にかけて5割近く増えていて、年々増加傾向にある(※調査期間:2020年8月 ※調査対象:15,599事務所)。
5分野の合計サイト数は、2019年調査での717サイトに対し、2020年は1074サイトと大きく伸びた。
分野別にサイトの増加数をみると、「相続」が最も多かった(増加数:99サイト)。増加率でみると、大幅な伸びを示したのは「労働」(前年比205.2%)、続いて「刑事」(同167.3%)。
2020年8月の調査で確認できた1074の特化型サイトのうち、5分野全て所持しているのは11事務所。それぞれ滋賀県、大阪府、山口県、和歌山県、兵庫県、広島県、茨城県、神奈川県、東京都、福岡県(2事務所)に所在していて、大都市に集中してはいない。
複数の特化型サイトを所持している事務所の、所持分野の主な組み合わせと事務所数は、下記の通り。
・「刑事」を除く4分野所持:26事務所
・「刑事」と「労働」を除く3分野所持:27事務所
・「離婚」と「相続」所持:43事務所
・「離婚」と「交通事故」所持:32事務所
・「交通事故」と「相続」所持:38事務所
また、「労働」を所持している119事務所のうち、「刑事」を除く他3分野も所持しているのは26事務所だった。
特化型サイトではどのような依頼者にどんなテーマで訴求しているのか。
2020年に最も増加率の高かった「労働」分野においては主に3種類ある。労災・残業代・退職トラブルなどを含む被雇用者側の労働問題を訴求するもの(70サイト)、被雇用者側の労働問題と対峙する企業(雇用者)向けに訴求するもの(28サイト)、中小企業向けに労務一般の支援業務を訴求するもの(10サイト)などだった。被雇用者のトラブルとしては、「退職代行・サポート」「女性」「外国人」「内部通報」を掲げるものも見られた。
「労働」分野に次いで、2番目に高い増加率となった「刑事」分野の特化型サイトは、冤罪を含め加害者側への訴求が中心となっている。逮捕を含めた刑事事件の流れと素早い対応の必要性を説明するものが一般的。そのほかの訴求ポイントは、「元検事の弁護士」(6サイト)「少年事件」(5サイト)「元裁判官」(2サイト)などがあった。
「離婚」分野の特化型サイトは、離婚を検討する段階の人を対象に、離婚時に起こり得るトラブルを説明しながら相談を受けつける形式のものが多い。また、養育費・親権を中心に訴求するサイトが8サイトあった。
「相続」分野は、紛争になる前に行えることや一般的な相続の疑問・悩みに答えることを入り口として訴求するのが一般的で、「遺言のサポート」を押し出すサイトも多い。そのほかの訴求ポイントとしては、「家族信託」(8サイト)「相続放棄」(3サイト)、「弁護士が税理士登録もしていること」(2サイト)などがあった。
「交通事故」分野では、被害者側に訴求するものが大半で、保険会社の対応にあたり弁護士を立てることの意義を解説するものが多くみられる。訴求ポイントとしては、「後遺障害」「後遺障害・死亡」(両方で31サイト)、「死亡事故」(3サイト)など。明確に加害者側へ訴求しているサイトは確認できなかった。
また、主要5分野以外にも、「ペット」「騒音トラブル」「いじめなどの子どもが巻き込まれるトラブル」などを訴求する特化型サイトもあった。