IT機器操作の補助などで非弁行為を横行させないための対策とは【民事裁判手続IT化アンケートvol.4】
【本記事は2020年9月18日に公開したものです】弁護士ドットコムでは、民事裁判手続のIT化に関して、全国の弁護士にアンケートを実施した(実施期間:2020年7月17日から31日)。7月31日の時点で、182名の弁護士から回答を得た。アンケート結果の概要を5回に分けて紹介する。 4回目は、「IT機器の操作の補助などに関する非弁行為が横行する可能性があるが、どのような対策が望ましいか」について、55人から寄せられた自由回答の結果をまとめた。
本人確認の厳格化、ITを導入する場合のルール化、非弁行為の罰則規定に関する声が多数
非弁行為に関するガイドライン等の明確化や名義貸しに対する罰則の強化などの他に、ITシステム面やITを導入する際のルール、注意喚起などにおいて、以下の意見が聞かれた。
【ITシステム面への提言】
・指紋認証等の生体認証の導入。
・日弁連が裁判用のIDを発行管理する。
・代理人の登録番号を期日の際に打ち込む。顔認証システムか声帯認証を用いれば、名義貸し非弁も一定程度撲滅可能。
・弁護士ごとにアカウントを配布し、1端末しかログインできないようにする。
・Microsoft Teamsという汎用ソフトを廃棄し、訴訟手続に特化したソフトを使う。
・webカメラを2台設置することとし、操作の補助についてもwebカメラに映す。
【ITを導入する際のルールへの提言】
・本人訴訟のために、有資格者以外には現状の訴訟手続(紙ベース、期日への出頭)を維持すべき。
・IT対応の訴訟に限り弁護士代理を強制する。
・双方代理人が付いたときのみに(ITを活用した裁判を)する。
・IT機器の操作補助に限っては有用と考えるのなら、日弁連または各単位弁護士会による許認可制を検討してよいのではないか(法令上できるのかという疑問もあるので、法改正も 視野に入れることになる)。
【非弁行為に対する罰則への提言】
・弁護士以外の有償サポートを禁止し罰則をつける。
・刑事罰の重罰化、とりわけ高額な罰金の併科を行うべき。
一方で、「非弁行為横行への対策は特に思いつかない」(9.0%)、「非弁行為が横行すると思えない」(1.8%)「IT機器操作補助は非弁行為にあたるのか疑問」(1.8%)との声も聞かれた。
また、「そもそも、IT機器の操作の補助などに関する非弁行為が横行する可能性がある、という前提が間違っている。今でも、非弁屋が準備書面を書き、職印を押してFAXで直送したとして、どこかでバレる心配があるだろうか。期日の出頭でさえ、本人確認されないのだから、大抵の相手方と知り合いの地方を除けば、非弁屋がなりすましたとしてこれまたバレる心配がない。そもそも、訴訟のような(一般的には)コスパの悪い業務に、非弁屋が算入してくるのだろうか」という意見もあった。
1回目 民事裁判手続IT化への期待大 弁護士の8割が賛成
2回目 裁判IT化 4割以上が「非弁行為の横行」に懸念
3回目 6割近くが「初回期日から6ヶ月以内に訴訟を終了するルール」を懸念