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図書館司書「雇い止め」に無効判決――「時給百数十円」の時間外作業に抗議した女性
女性の代理人をつとめる柿沼真利弁護士(左)

図書館司書「雇い止め」に無効判決――「時給百数十円」の時間外作業に抗議した女性

東京都足立区が民間企業に運営業務を委託している「区立図書館」で働いていた女性司書(52)が雇い止めされたことに対して、女性が委託先の金属加工会社を相手取った裁判を起こし、雇用の継続などを求めていた。東京地裁は3月12日、「雇い止めは無効」という女性の訴えを認め、会社に未払い賃金の支払いを命じる判決を下した。女性は雇用期間中、勤務時間外の作業が行われていることに抗議していた。

●「業務遂行能力の不足」を理由に契約更新を拒否

判決などによると、女性は2010年4月、図書館業務の委託先の金属加工会社と1年ごとの有期雇用契約を結び、図書館で働き始めた。同年9月からは副館長として勤務。2011年4月には契約更新をした。

ただ、同社が2011年8月、約2万冊の書籍に盗難防止用の磁気テープを貼る作業を「勤務時間外」におこなうよう従業員に求めた際、女性は「時給換算すれば百数十円程度にしかならない」と抗議した。

その後、作業の一部は勤務時間内におこなうよう改善されたが、2012年1月、同社から「業務遂行能力が不足している」「勤務態度が良くない」として、図書館従業員のうち、女性だけが同年4月以降の契約更新を拒否された。女性は2013年8月、雇い止めは報復措置だとして提訴した。

今回の判決で東京地裁は、「労働契約が更新される」と女性が期待することには、合理的な理由があると判断した。その理由として、2010年から5年間、図書館の運営を委託されていた同社には、(1)司書の資格を有する従業員を一定数配置する必要性があり、(2)期間の途中で従業員を減らすことが予定されておらず、(3)図書館の効率的運営や職場環境の整備の観点から、従業員を継続して雇用する方針が認められる点などをあげた。

●「襟を正して、業務をやってほしい」

判決後、女性は東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開き、「有期雇用であっても、不当な雇い止めは無効であると認められた。非常にうれしい」と緊張気味に語った。また、同社について、「襟を正して、コンプライアンス意識をもって業務をやっていっていただきたい」と述べた。

同席した原告代理人の柿沼真利弁護士は「一般的に、有期雇用であっても、何度も反復して契約更新していれば、『労働者が更新を期待することは合理的だ』として、雇用の継続が認められる。女性の場合、1回だけの更新だったが、裁判所は合理的な理由があると判断した」と判決を評価した。

被告側は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「控訴するかどうか、弁護士と相談する」とコメントしている。

(弁護士ドットコムニュース)

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