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2013年11月22日 12時00分

JASRACの「包括契約」に東京高裁がNO! 判決のポイントはどこにある?

JASRACの「包括契約」に東京高裁がNO! 判決のポイントはどこにある?
東京高裁は、JASRACが放送局と結んでいる包括契約について、「他の事業者を排除する効果がある」という判決を下した

JASRAC(日本音楽著作権協会)が放送局と結んでいる「楽曲使用料」の契約に対して、イエローカードが突きつけられた。東京高裁が11月1日、JASRACによる使用料の徴収方式について、「他の事業者を排除する効果がある」という判決を下したのだ。ただ、敗訴した公取委は11月13日に最高裁に上告しており、最終的な決着はまだ先の話だ。

問題となったのは、JASRACがテレビ局やラジオ局と結んでいる包括契約だ。これは、実際の楽曲の利用回数等とは無関係に、JASRACに年間の放送事業収入の1.5%を支払えば、膨大なJASRACの管理楽曲を番組内で自由に使えるというもの。放送局は1曲ごとに使用許諾を得る必要なく自由に使用できるため、局側にとっては便利なシステムだ。

ところが、放送局は追加の楽曲使用料支払いを回避しようとして、他の徴収方式をとる著作権管理事業者の楽曲の利用を控えることになり、大きな参入障壁となっている可能性がある。そこで、公正取引委員会は2009年にいったんは独占禁止法違反を認めてJASRACに排除措置命令を出した。しかし、JASRACの不服申し立てを受け、12年に一転して命令を取り消す審決をした――という経緯がある。

今回の裁判は、それに反発した同業のイーライセンスが「審決取消し」を求めて、裁判に訴えたというものだ。一方、判決の影響を受けるJASRACは「到底承服できない」としている。今回の判決のポイントはどのような点にあるのだろうか。独占禁止法と知的財産法にくわしい籔内俊輔弁護士に聞いた。

●公正取引委員会は、なぜ排除命令を取り消したのか?

籔内弁護士は、東京高裁によって取り消された公正取引委員会の審決のポイントを、次のように解説する。

「公取委は審決で、包括契約が同業者排除をもたらしたとの証明がなく、独禁法違反ではないとしました。

その主な理由として、放送局による楽曲利用回数等からして、包括契約によりイーライセンスの管理楽曲の利用回避が生じたとは断定できず、イーライセンス管理楽曲の利用が伸びないのは、新規参入に当たっての準備不足等による影響が大きい点を挙げています」

つまり、公取委は、JASRACと放送局が結んだ包括契約について、「同業者を排除するものとは認められない」としていたわけだ。

さらに、籔内弁護士は、このような審決が下された背景として、以下の点を指摘する。

「利用回数によって徴収する方式の『利用回避』の実態の裏付けが十分でなかったことや、放送局関係者の説明が公取委の調査時点から変遷したこと等が、公取委の『違反ではない』という結論に影響したのではないかと思われます。ただ、現職の公取委の委員一名が審決書に署名しておらず、五名の委員間でも意見が分かれていた可能性が高いといえます」

●東京高裁が公取委の審決を取り消したポイント

今回の裁判は、東京高裁が公取委の審決を取り消したわけだが、その判断の仕組みはどうなっていたのだろう。

「公取委の審決への取消訴訟では、裁判所は公取委の事実認定を尊重して、審決の基礎となった事実を立証する『実質的な証拠がない場合』に、審決を取り消すことができるとされています(独禁法82条1項1号)」

つまり、公取委の事実認定の基礎となる「実質的な証拠」があるかどうかが、裁判では焦点となったということだ。そして、東京高裁は、「公取委の事実認定には、実質的な証拠がない」と判断したのだ。なぜなのか。

「その理由として、次のような点があげられます。

(1)放送局は、イーライセンス管理楽曲には追加使用料がかかる旨の社内周知をしているが、これは包括契約の使用料以上の支払いを避けるために、イーライセンス管理楽曲の利用回避を働きけるものであり、包括契約によるイーライセンス管理楽曲の利用回避の事実がある。

(2)イーライセンス管理楽曲でも、人気歌手の曲である等の事情がある場合には利用されることはありうるが、そういった事情がない他の楽曲は利用が控えられている」

すなわち、東京高裁は、放送局でイーライセンス管理楽曲の利用が回避されている原因として、JASRACとの「包括契約」の存在が重要な役割を果たしていると、認定したといっていいだろう。

さらに、籔内弁護士は、今回の判決で、「審決の取消訴訟を誰が争えるか」という手続的論点についても、新しい判断が示されたと解説する。

「公取委の審決の名あて人以外であっても、独禁法違反によって、著しい業務上の被害を直接的に受けるおそれがあると認められる同業者は、取消訴訟を行えるものとされました」

このように注目すべき判断が示された東京高裁の判決だが、公取委が上告したことによって、審理は最高裁に委ねられることになった。JASRACと放送局の関係について、最高裁がどのような判断を下すのか、裁判の行方を注視していきたい。

(弁護士ドットコムニュース)

取材協力弁護士

2001年神戸大学法学部卒業。02年神戸大学大学院法学政治学研究科前期課程修了。03年弁護士登録。06〜09年公正取引委員会事務総局審査局勤務(独禁法違反事件等の審査・審判対応業務を担当)。12年弁護士法人北浜法律事務所東京事務所パートナー就任。16年〜神戸大学大学院法学研究科法曹実務教授。

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