4月13日、北朝鮮は「人口衛星の打ち上げ」と称して長距離弾道ミサイルの発射実験を強行した。結果的に発射は失敗となり日本に被害は生じなかったが、今後も北朝鮮が同様の実験を行なう可能性は依然として残っており、予断は許されない。
日本政府は北朝鮮のミサイル発射に対して地上配備型迎撃件ミサイル(PAC3)を配備し国防体制を敷いたが、一般市民からすれば個人の準備でミサイルを防げるわけはなく、もしミサイルが日本に向かってきた場合は迎撃の成功を祈るしかない。
しかし、仮に日本国内で北朝鮮のミサイルが迎撃された場合、ミサイルの部品が家屋などに落ちて損害を受けたり、怪我を負うような被害を受けたら、その損害について国や北朝鮮から補償を受けることはできるのだろうか。あるいはどのように損害補償を求めたらよいのだろうか。
不法行為に詳しい近藤公人弁護士に聞いた。
「残念ながら基本的に国から補償は受けられません。補償を受けることができる可能性があるとすれば、自衛隊員のミスで、本来なら早期に迎撃ミサイルを発射すればミサイル部品などが地上に落下しなかったのに、発見が遅れたり迎撃が遅れたりしたために落下したような場合に限られるでしょう。」
「ただし、そもそも迎撃ミサイルの精度も高いとは聞いていないので、迎撃が不発に終わった場合でも過失や違法性を認定するのは大変困難でしょう。」
つまり、国が本来であればミサイルを問題なく迎撃できたことが明らかにも関わらず、適切な対応をしなかったことにより被害を受けた場合に限り、国から損害補償を受けることができる可能性があるということだ。しかしこれを証明するのは近藤弁護士のいう通りかなり困難で、事実上は補償を受けることは難しいと思われる。
それでは北朝鮮に対して補償を求めることはできるのだろうか。
「こちらも残念ながら、北朝鮮に補償を求めることはできないでしょう。戦前の判例になりますが、日本の裁判手続きでは、外国国家自体を、訴えることはできないとされています。」
今回の発射事件の失敗は北朝鮮の技術力不足を露呈したが、将来に向けての危険性は残念ながら払拭されていない。もし一般市民が被害を受けても補償される見込みの低さを考えると、あらためて北朝鮮の無法ぶりが際立つ。現状では、万一の際は迎撃の成功を願うしかなさそうだ。