数年前から急速に増え、今やどこの街にもある感がする「ガールズバー」。「若い女性店員がいる普通のバー」という触れ込みで、飲食店として深夜まで営業している店もあるようだ。
一方、「キャバクラ」も似たような形態の店だが、こちらはバッチリ風俗営業許可が必要とされている。ガールズバーとキャバクラは、全く違う存在と語られることもあるが、ときどき「ガールズバー」がキャバクラのような接客をしていて、風営法違反(無許可営業)で摘発を受けたという報道もしばしばある。
なんだかややこしい話だが、この2つは法律上、区別されているのだろうか。また、風営法の営業許可が必要ない「普通のバー」と、許可が必要なキャバクラ店との境界線は、どこにあるのだろうか。飲食店の営業許可などにくわしい小西一郎弁護士に話を聞いた。
●「接待」があれば風俗営業許可が必要
「一般的にキャバクラは女性スタッフが客の隣にすわり、一緒に飲食しながら接客する店舗をいいます。一方、ガールズバーは、女性スタッフがカウンター越しに接客する店のことです」
小西弁護士はこう説明する。一般的には、店で接客をする女性スタッフが、「隣に座る」か「カウンター越し」かの違いとして、認識されているようだ。
それでは、法律上は、どんな区別がされるのだろうか?
「キャバクラは、風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律(いわゆる「風営法」)の第2条第2項第2号の『接待遊飲営業』とされています」
「接待遊飲営業」とは何だろう?
「飲食店で『接待』をすることです。風営法第2条第3項の定義では、接待とは《歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと》とされています。その解釈指針である《風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律等の解釈運用基準(平成22年7月9日警察庁丙保発第14号、丙少発第22号)第4「接待について」》には、もう少し詳しい定義があります。そのポイントをまとめると、次の2点です。
(1)客が営業者、従業者等との会話、サービス等に『慰安』や『歓楽』を期待して来店する。
(2)その客の気持ちに応えるため、営業者側が、積極的に、相手を特定して《談笑、お酌、踊り、遊戯、身体的接触等興趣を添える会話、サービス等》を行う。
女性スタッフが客の隣にすわって飲食をともにし、歓談するキャバクラは、明らかにこれに該当します」
●カウンター越しの会話でも「接待」とされる可能性がある
それでは、ガールズバーはどうだろうか。
「ガールズバーの客は、単にお酒を飲みに行くのではなく、バーテンダーと称する女性スタッフとの《興趣を添える》会話を期待して来店します。お酒が飲みたいだけなら、より安い普通のショットバーにでも行くでしょう」
確かに、そこがショットバーとの違いだろう。では、カウンター越しの会話でも『接待』とされる場合はあるのだろうか?
「1分や2分の挨拶程度の会話なら問題ないでしょうが、ある程度の時間、特定の女性スタッフと特定の客との会話があれば、世間話の範疇(はんちゅう)を超えます。
それは『慰安』や『歓楽』を期待して来店した客を積極的にもてなす行為、つまり接待行為に当たると考えて良いと思います。
なお、ある都道府県の警察では、20分以上特定の女性スタッフが特定の客の接客をすれば接待に当たる、との判断基準を示していると聞いたことがあります」
ということは……?
「したがって、世間一般にいうガールズバーは、接待遊飲営業であると考えられ、公安委員会からの許可が必要で営業時間等の規制を受けるべきものと思います」
要は「接待」があれば、店の名称やジャンルに関係なく、「風俗営業許可」を取らなければならないということだ。「ガールズバー」と呼ばれている店も、その対象と見なされる可能性があるということだろう。経営者はもちろん、従業員や利用客も、このポイントは理解しておいたほうがよさそうだ。