電車内のマナー違反と言えば、携帯電話の通話やヘッドフォンの音漏れなどいくつかあるが、車内で「酒盛り」をするのはどうだろうか。
8月中旬、中年男性3~4人がビール片手に電車内で酒盛りをする画像がツイッターに投稿された。路線は分からないが、車内の様子からすると、新幹線や特急ではなく普通列車のようだ。中央の通路にテーブルのようなものを置き、その上に弁当のようなものを広げている。まるで居酒屋気分だ。
この画像はネット上ですぐに拡散し、「公共の場での酒臭さはタバコと同じぐらい不快」「通路塞ぐな」といった非難の声が挙がった。同じ車両にいた乗客も「迷惑だ」と感じていたかもしれない。こうした電車内の酒盛りを何らかの法律で取り締まることはできないものなのだろうか。鉄道にくわしい小島好己弁護士に聞いた。
●秩序を乱す乗客は「退去」させられる可能性も
「鉄道営業について規定した『鉄道営業法』42条1項4号の規定によれば、係員は、車内における秩序を乱す旅客を、車両外や鉄道敷地外に退去させることができる、とされています。ただし、この規定に罰則はないので、秩序を乱したとしても乗客が鉄道営業法による刑罰を受けることはありません」
――「退去」までいかなくても、単にそういった行為を禁止することもできる?
「鉄道は、不特定多数の旅客を、限られた空間に乗せて輸送する公共交通機関です。
したがって運送契約上、列車内で他の乗客に迷惑をかけたり、列車の円滑かつ安全な運行を阻害したりする、危険のある行為を鉄道会社は禁止できると思われます」
――車内での酒盛りは「秩序を乱す旅客」や「危険な行為」にあたる?
「単に缶ビールを飲みながら談笑する程度であればともかく、つまみを並べたテーブルを通路に置いての酒盛りとなると、車内の秩序を乱す行為あるいは危険な行為として、禁止あるいは列車外への退去の対象となりうると思われます」
――落ち着いて飲んでいたとしても?
「騒がずに飲んでいたとしても、テーブルで通路を塞げば、他の乗客の利用や乗務員の通行の妨げとなります。
また、緊急停止のときには、テーブルその他の物が飛び散って、他の乗客に危険が及ぶ場合もありますし、万一の場合には乗客の逃げ道を塞ぐ危険性まであります」
普通列車の車内に自前のテーブルを広げて飲み食いするのは、やり過ぎを超えて「危険」ということだろう。「どうしても車内で食事を」という人は、休暇をとって夜行列車の「北斗星」などに乗り、食堂車でのディナーを満喫するのがよさそうだ。