夏本番を控え、各地で真夏日が観測されている。気象庁の季節予報を見ても、今年の夏は暑くなりそうだ。猛暑となると、気をつけたいのが熱中症だ。毎夏、子どもやお年寄りに限らず、多くの人が熱中症で病院に搬送される。
特に猛暑のなかでのスポーツは、熱中症のリスクが高い。毎年、スポーツの行事で、参加者が熱中症で倒れたというニュースが全国をかけめぐる。7月3日も、大阪・松原市の小学校で、体力測定をしていた児童7人が熱中症の症状を訴えて、病院で手当てを受けた。
熱中症対策として、個人個人が水分をきちんととるなど、自分の体調を管理すべきなのは当然だが、スポーツ大会を運営する側も、参加者の健康管理に気を配る義務はあるのだろうか。夏のスポーツ大会で参加者が熱中症で倒れたり、最悪の場合、死者が出ることもあるが、そうした場合は運営側に責任を求められるのだろうか。古川拓弁護士に聞いた。
●運営側がどこまで責任を負うかは、参加者の年齢などによって、ケースバイケース
「スポーツ大会の運営側(主催者)と参加者との間には、原則として契約関係が成立していると考えられます。主催者は、この契約に付随して、その参加者が安全に競技できるように配慮する義務、すなわち「安全配慮義務」を負っていると考えられます。
主催者がこの安全配慮義務に違反した結果、参加者が熱中症になって死亡したり、症状が重篤化したと認められる場合は、主催者が損害賠償責任を負うことがありえます」
――どういう状況だったら「安全配慮義務」に違反していたといえる?
「それはケースバイケースです。次に挙げるようなポイントについて、主催者が義務を果たしていたかが総合的に判断されることになるでしょう。
(1)気温、湿度、直射日光や風の有無などといった会場環境の要因
(2)運動の強度や継続時間、休憩の取り方や水分・塩分補給の状況への配慮
(3)参加者の年齢・体力や健康状態の把握
(4)実際に熱中症にかかってしまった場合に備えて、適切な救護活動体制を取っているか」
――総合的な判断とは?
「もう少し具体的にいうと、気温や湿度が一定以上の場合は競技を待機・軽減あるいは中止するなどしたか、休憩や水分・塩分補給ができる体制が取られていたか、事前に参加者の健康チェックを行ったか、救護体制はどのようだったかなどですね」
――参加者の年齢や体力によっても基準は違う?
「たとえば、年少者向けのスポーツ大会だったら、参加者自身の体調管理が期待できないとして、主催者に要求される安全配慮義務はより重いものになるでしょう。一方、耐久レースなど、過酷な競技で参加資格を厳しくしている場合などは、主催者は参加者のレベルに応じた安全配慮をすれば足りることになります。まさにケースバイケースといえるでしょう」
――主催者以外にも、安全配慮義務が認められるケースはある?
「たとえば、会社の従業員が仕事として参加している場合や、学生・生徒・児童が、学校のクラブ活動の一環として参加している場合には、それぞれ会社や学校に安全配慮義務が生じる場合があります。また、安全配慮義務のあるなしにかかわらず、従業員の方であれば、労災と認定される可能性があります」
というわけで残念ながら、誰にでもわかりやすく判断できる基準があるわけではなさそうだ。古川弁護士は「もし、そういう目に遭ってしまったら、具体的事情に応じて、一度は弁護士に相談されることをお勧めします」とアドバイスしていた。