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橋下市長が補助金を打ち切った「大阪人権博物館」 いまはどうなっているのか?
大阪人権博物館には「人権」にかんするさまざまな資料が展示されている

橋下市長が補助金を打ち切った「大阪人権博物館」 いまはどうなっているのか?

橋下徹大阪市長の「従軍慰安婦」をめぐる一連の発言が問題になったとき、国会の女性議員を中心に「女性の人権を冒とくしている」と非難の声があがった。その橋下市長のお膝元で、「人権」をめぐる議論がほかにも起きている。それは「大阪人権博物館」(リバティおおさか)の存続問題。大阪府と大阪市の補助金打ち切りによって、運営が危機に瀕しているのだ。

●昨年4月、橋下市長と松井知事が「補助金」の見直しを表明

大阪人権博物館は1985年、部落問題を中心とした歴史資料館として大阪市浪速区に開館、その後、在日コリアンや女性差別の問題など「人権」にかかわる総合的な展示を行う博物館へと拡充していった。もともと大阪府・市をはじめとする自治体と大阪の民間企業が出資者となり、財団法人として発足。運営費の大半は、大阪府と大阪市の補助金によってまかなわれていた。

ところが昨年4月、橋下大阪市長と松井一郎大阪府知事がそろって博物館を視察したあと、補助金支給の見直しを表明。その理由として、「展示内容が差別や人権に特化されていて、子どもが夢や希望を抱けるようなものではない」ことをあげた。人権博物館の存続を求める23万筆の署名が大阪府・市に提出されるなど反対運動も起きたが、結局、今年3月で補助金が打ち切られた。

収入の8割近くを占めていた補助金が途絶え、今年度からは市民の寄付などで運営を続けている同館だが、現状はどうなっているのだろうか。博物館をたずねた。

前田朋章事務局長によると、存続のためにまず行ったことは人件費の大幅なカットと施設運営・管理経費の削減である。「全職員は3月31日付けで、事業主都合による整理解雇となりました。4月から新たな雇用条件により採用された職員は、全員一年更新の有期契約職員となりました。その中には、週3日勤務の嘱託職員も含まれています。それにより、人件費は54%減額となりました」。さらに、管理費や光熱費を節約するため、日曜を休みにするなど、開館日も減らさざるをえなかった。

●「こんなにしっかりした展示物があるとは・・・」と驚く来館者

苦しい財政事情のもとでの運営だが、来館者からは「続けてくれ」と応援の声が寄せられている。授業の一環で同館を訪れていた奈良県の大学生は「在日コリアン一世の証言VTRが印象に残った」という。「実家の近くには在日の人も多く住んでいましたが、VTRを見て在日一世の人たちの苦労がわかって良かったです」。

また、同館への補助金見直しを報道で知っていたという別の学生も「橋下さんは『夢や希望を持てない』とボロカスに言ってたけど、こんなにしっかりした展示物があるとは思わなかった」と驚いていた。

彼らのように展示内容を肯定的に評価する、橋下発言とは対照的な声もある。同館の成山治彦理事長もホームページで「博物館が果たしてきた役割を考えると、簡単に歴史を閉じるわけにはいきません」と意欲を示している。

だが、補助金が再開される見通しは立っていない。大阪市の市民局人権室に問い合わせてみたところ、「すでに博物館側から自主運営の方針は示されており、補助金の支給を再開することは考えていません」という回答だった。

(弁護士ドットコムニュース)

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