読書感想文や自由研究などの宿題を有料で丸ごと請け負う「宿題代行サービス」に注文が相次いでいると、7月16日付の読売新聞が報じた。
報道によると、「塾では連日テスト、子どもの負担減らしたい」と依頼する保護者らが目立つという。宿題は学習指導要領などで位置づけられていないため、文部科学省は「代行は望ましくないが、業者にやめさせることは難しい」としている。
こうした代行業者はインターネットなどで注文を受け付けている。たとえば、自由研究1件で1万5000円、読書感想文1枚(400字)2500円などだ。感想文の場合に子どもに清書させたり、漢字ドリルで子ともの字体をまねて書いたりして、バレにくくしているようだ。
本来、宿題は生徒や児童が自分でやることを前提にしているはずだが、代行サービスに法的問題はないのだろうか。布施正樹弁護士に聞いた。
●詐欺罪にはあたらない
「結論から言うと、このような宿題代行サービスが違法とされる可能性は低いと思われます」
布施弁護士はこのように述べる。なぜだろうか。
「こうしたサービスについて、成立が考えられそうな刑法上の犯罪は、詐欺罪と私文書偽造罪でしょう。
しかし、詐欺罪は、人を欺いて『財物を交付させた』場合に成立します。単に宿題を自分でやったと偽っただけでは詐欺罪になりません」
では、私文書偽造はどうだろうか。
「私文書偽造罪が成立するためには、ごく大まかに言うと、次のような要件が必要です。
(1)文書を偽造、つまりA名義の文書を実際にはBが作成すること
(2)偽造した文書が『権利、義務もしくは事実証明に関する文書』であること
権利義務に関する文書の例としては、契約書などがあげられます。事実証明に関する文書にどのようなものが含まれるかについてはさまざまな見解があるのですが、判例の中には、大学入試の答案がこれにあたるとしたものがあります」
●宿題は、もともと第三者の関与があり得ることを前提としている
宿題代行業者が仕上げた宿題は、どう考えればいいだろうか。
「たとえば、宿題代行業者が、自由研究や読書感想文のアイデアを出したり、書き方をアドバイスするといった『手伝い』をするにとどまったとしましょう。
その場合、最終的には生徒本人が宿題を作成していると言えるのであれば、文書の『偽造』には当たらず、(1)の要件を充たさない可能性が高いでしょう」
まるまる全部、代行業者が作った場合は違ってくるのではないか。
「宿題代行業者が、宿題を一から十までまるまる代わって作成している場合でも、私文書偽造罪が成立するかは微妙です。
というのも、宿題は自宅など学校側の目の届かないところ、もともと第三者の関与があり得る状況下で行われることを前提としています。
試験などと違って、生徒の学力を厳正に評価する手段として用いられているものではありません。
そのような宿題が『事実証明に関する文書』に当たると言えるかは疑問であり、(2)の要件を充たさない可能性が高いと思われます」
布施弁護士はこのように分析していた。