岩手県矢巾(やはば)町で、中学2年の男子生徒(13)が列車に飛び込んで自殺したとみられる問題で、この生徒が担任の教師に提出していたノートの中に、いじめや自殺をほのめかす記述があったと報じられている。
報道によると、亡くなった男子生徒が通っていた中学校では、一日の出来事について、生徒と担任がやり取りする「生活記録ノート」がある。このノートの中で、男子生徒は次のように、いじめについて訴えていた。
「なぐられたり、けられたり、首しめられたり」
「生きるのにつかれてきた。氏(死)んでいいですか」
「ボクがいつ消えるかはわかりません。もう市(死)ぬ場所はきまってるんですけどね」
担任も内容を確認していたとされるが、学校側は今回のノートの内容について、「担任から報告がなかった」「いじめがあった認識はない」と説明しているという。男子生徒の自殺後、担任は病欠しており、どのような対応をとっていたのかなど、全体像は詳しくわかっていない。
一般論として、教師や学校が「いじめ」を見過ごした場合、どんな責任があるのだろうか。西口竜司弁護士に聞いた。
●国家賠償法にもとづく賠償責任がある
「今回の報道を聞いて、『なぜ』という言葉しか浮かんできませんでした。先生は気付いていたはずなんです。何かできることがあったはずなんです」
西口弁護士はこのように述べる。一般論として、いじめ自殺が起きた場合、教師や学校の法的責任はどうなっているのだろうか。
「教師や学校に対して、刑事上の責任を追及することは難しいと思います。
そこで遺族としては、国公立学校の場合、学校側に対して、損害賠償請求(国家賠償法1条1項)をしていくことになります。
この法律では、公務員が故意または過失によって他人に損害を与えた場合、国または自治体が賠償責任を負いますが、公務員個人は賠償責任を負わないとされています。つまり、教師に対して、直接、損害賠償を求めることはできません」
どのようなポイントがあるのだろうか。
「損害賠償を求めるにあたって難しいのは、『生徒が自殺することまで予見できたのか』という問題です。
このような予見可能性は『認められない』とした判決が非常に多いのも事実です」
●「お金で解決できるものではないが・・・」
今回のケースでは、男子生徒が担任の教師に対して、生活記録ノートで「SOS」を出していたとされるが・・・。
「生徒が教師に、いじめの事実を申告したり、『死にたい』という言葉を伝えている場合、予見可能性が認められると考えられます。おそらく、学校に対する損害賠償請求は認められることになるでしょう。
もちろん、お金で解決できるものではありませんが・・・」
これまでも、学校でのいじめは、何度も繰り返し、社会的な問題になっている。
「いじめの問題は深刻です。弁護士として、お伝えしたいのは、いじめに苦しんでいる人の味方となる制度がいくつかあるということです。
たとえば、24時間いじめ相談ダイヤル(0570-0-78310)で相談して下さい。弁護士に相談して下さい。できることはあります。今後このような問題が発生しないことを祈るばかりです」
西口弁護士はこのように述べていた。