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アイルランド国民が「同性婚」に賛成投票ーーゲイの南弁護士が「気がかりな点」とは?
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アイルランド国民が「同性婚」に賛成投票ーーゲイの南弁護士が「気がかりな点」とは?

アイルランドの国民は同性婚に「賛成」——。5月23日に開票された国民投票で、62%が「同性婚を認める憲法改正」に賛成票を投じた。同性婚の是非が「国民投票」という形で問われたのは、世界で初めてとあり、欧米の主要メディアがトップニュースとして結果を報じた。

アイルランドのメディアは、同性婚の実現を祝う「賛成派」の熱気を繰り返し伝えた。公共放送「アイルランド放送協会」は、女性同士のカップルがテレビカメラの前で熱いキスをし、プロポーズの言葉を伝える場面を報じた。

アイルランドは保守的とされるカトリック教徒が多い国で、同性愛は22年前まで「犯罪」とされていた。そんな国での国民投票だけに、大きな注目を集めていたのだ。

自らゲイであることを公表している南和行弁護士は、ニュースを見て「本当によかった」と喜びの声をもらした。その一方で、南弁護士には「気がかりな点」が2つあるという。それは何だろうか?

●人権は「多数決」で決めて良い?

「ひとつめは『同性婚を認めるかどうかという問題は、単純な多数決で決めていい問題なのか』という点です。

同性婚を認めるかどうかは、同性カップルが結婚する権利、つまり『人権』をどう保障するかという問題です。単純な多数決で少数者の人権を認めることができるということは、逆に多数決で人権を認めないことも容認できる、ということにならないでしょうか。

今回はたまたま権利が認められたから良かったですが、もし反対派がちょっと多くて憲法改正が否決されていたらどうでしょう。『少数者の人権はなくていい』と、考える人がちょっとでも多ければ、人権が否定されてもいいのでしょうか。そう考えると、多数決という方法には、一抹の不安を感じました」

●「憲法改正」という点への懸念

「もうひとつが、今回のニュースが日本で報じられたとき、『憲法を改正しなければ、同性婚ができない』という形で理解されなければいいなという点です。

アイルランドと日本では憲法の中身も、改正の手続きも違うのですが、単純に同列に考える人が出てきてしまうのではないか、と。

もし日本で同性婚を認めるために憲法改正が必要だとすると、同性婚の実現が遠のいてしまう可能性があると思います」

日本国内でも「同性婚を認めるためには、憲法を改正しなければならない」という見解があるが・・・。結婚について定めた憲法24条について、南弁護士は次のように話していた。

「日本では憲法改正をしなくても、同性婚を認める法律をつくることができると思います。憲法24条は『両性』という言葉を用いていますが、同性婚を否定も肯定もしていないと解釈することが可能だからです」

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この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

南 和行
南 和行(みなみ かずゆき)弁護士 なんもり法律事務所
1976年生まれ。京都大学農学部・同大学院修士課程修了。建材メーカー勤務を経て、2006年に大阪市立大学法科大学院修了(1期生)。2009年弁護士登録。2013年にパートナーの吉田昌史氏とともになんもり法律事務所を開設。松竹芸能にタレント弁護士として所属し、テレビ番組のコメンテーターなどを務める。著書に『同性婚 私たち弁護士夫夫(ふうふ)です』(2015年、祥伝社)などがある。

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