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GACKTさんがパリで受けた「人種差別」 日本のレストランで起きたら、どうなる?
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GACKTさんがパリで受けた「人種差別」 日本のレストランで起きたら、どうなる?

ミュージシャンのGACKTさんがパリのホテルで「露骨な人種差別」に遭ったとブログマガジンで明らかにして、議論を呼んでいる。

3月30日に掲載されたブログマガジンによると、GACKTさんは、3月の終わりにパリに立ち寄った際、1人で朝食を取ろうとホテル内のビュッフェに入った。GACKTさんは入口近くの眺めのいい席に座ったが、店員に奥の席へ行くよう告げられ、仕方なく席を移った。

ところが、後から店に入ってきた白人客が、GACKTさんがさっきまで座っていたテーブルに着席したにもかかわらず、店員は何も言わなかったそうだ。

その後も店側は、アジア系の客を奥の席に通し、白人の客を窓際の席に通していたため、GACKTさんは人種差別だと確信したという。ブログマガジンに「こんな風に未だに(差別が)残ってるんだな・・・」と記していた。

外国人旅行客が増え、日本の飲食店でもさまざまな人種の人を見かける機会が多くなった。もし、同じような対応が日本の飲食店で行われた場合、なにか法的な問題が生じるだろうか。石井龍一弁護士に聞いた。

●憲法は「法の下の平等」を定めているが・・・

「日本国憲法は『法の下の平等』を定めています。人種や国籍によって差別されない権利は何人にも保障される基本的人権です。この権利は性質上、日本にいる外国人にも保障されると考えられています」

石井弁護士はこのように述べる。そうすると、日本のレストランが、来店した外国人に対して、人種によって異なった対応をすれば、人権侵害になるのだろうか。

「憲法は『国家と国民』との関係を定めています。今回のような店と客という『私人と私人』の関係には、直接的には適用されません。

私人はそれぞれに権利があって、その間の調整には、民法をはじめとする私法が適用されることになっています」

●民法の「不法行為」にあたる可能性

すると、今回のケースも、私人同士ということで、問題はないということだろうか。

「今回のケースでは、どの客をどの席に案内しようが店側の自由だ、という考え方もあり得るでしょう。

しかし、私人と私人との間においても、基本的人権を保障する憲法の趣旨からして、ある私人の行為が、他の私人の基本的人権を侵害するような場合は、民法上の不法行為が成立することがあると考えられています。

つまり、何の合理的理由もないのに、ただ人種や国籍の違いを理由として眺望のよい席に案内しない、という店側の行為は、民法上の不法行為にあたる可能性があります。

その場合、店側は差別的扱いを受けた客の精神的苦痛に対して、慰謝料を支払う義務があります。

実際、日本において、外国人の入浴を拒否した銭湯に対し、外国人客に対する慰謝料の支払いを命じた裁判例もあります」

石井弁護士はこのように述べていた。

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