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公務員限定「婚活パーティ」が批判浴びて中止――「職業差別」にあたるのか?
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公務員限定「婚活パーティ」が批判浴びて中止――「職業差別」にあたるのか?

鳥取市と民間イベント会社が共同運営する「婚活サポートセンター」が3月13日に実施する予定だった婚活パーティについて、「男性は公務員に限る」と告知したところ、「職業差別だ」などの批判が寄せられたため、中止に追い込まれた。

鳥取市によると、センターを開設した昨年11月から3回、婚活パーティを開いてきたが、いずれも定員割れになっていた。とくに女性の参加者が少なかったことから、今回は男性参加者を公務員に限定した。その結果、定員20人に対して79人の女性から応募があったという。

ところが、3月5日から「公務員限定は職業差別」「税金での運営はけしからん」といった苦情が電話やメールで寄せられた。さらに、参加者に対する批判的な意見がインターネット上に書き込まれたため、鳥取市は同日、中止を決めた。

だが、今回のように参加者の属性に「条件」をつけた婚活パーティはたくさんある。趣味や年齢だけでなく、年収や学歴で限定されているものもある。公務員に限定したことは「職業差別」にあたるとして、許されないのだろうか。西口竜司弁護士に聞いた。

●「合理的な理由があれば、差別的な取り扱いも許される」

「役所やその関連団体が主催する婚活パーティで、参加者を公務員に限定しても、『職業差別』にあたるとはいえないでしょう」

西口弁護士はこう切り出した。なぜ、そう考えるのか。

「憲法14条1項は『法の下の平等』を定めています。

条文の内容は、『すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において、差別されない』というものです」

つまり、憲法上、職業による差別は認められていないということのようだ。今回のケースは「職業差別」にあたらないのか。

「憲法はみんなを一律に平等に扱う『絶対的平等』ではなく、個人の差異を前提に、それに応じて平等に扱う『相対的平等』を定めているものです。したがって、合理的な理由があれば、差別的な取り扱いが許されることになります。

婚活パーティの参加者を公務員限定にすることは、不合理であるとまではいえないので、ただちに憲法14条1項に違反するとはいえないと考えます」

●役所が「婚活パーティ」を開く必要があるのか?

一方、鳥取市には「税金を使った運営」に疑問を投げかける意見も寄せられていた。鳥取市は、婚活サポートセンターについて、年間運営費の9割にあたる500万円を支出しているいうが、この点についてはどう考えるのだろうか。

「男女がお見合いをする『婚活パーティ』に税金を投入するわけですから、支出の根拠が地方自治法で明確にされている必要があります。

また、婚活パーティの費用をどういう名目で支出しているのかわかりませんが、場合によっては、不当な支出にあたるといわれる可能性があるかもしれません。

さらに、実際にそこまでいくことはないと思いますが、住民監査請求の対象になって、ひいては、住民訴訟で費用を返せと請求される場合もあるでしょう」

このような見解を示したうえで、西口弁護士は次のように述べていた。

「個人的には、『地方再生』も大切ですが、役所がわざわざ婚活パーティを開く必要があるのか疑問です。民間にもっと頑張ってもらうべきだと思います」

少子高齢化や人口減少で苦しむ中で、婚活イベントを開いている地方自治体は全国各地にある。今回、大きくクローズアップされることになったが、「公務員限定」という問題だけでなく、そもそも行政がやるべきかどうか、考える必要もあるだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

西口 竜司
西口 竜司(にしぐち りゅうじ)弁護士 神戸マリン綜合法律事務所
大阪府出身。法科大学院1期生。「こんな弁護士がいてもいい」というスローガンのもと、気さくで身近な弁護士をめざし多方面で活躍中。予備校での講師活動や執筆を通じての未来の法律家の育成や一般の方にわかりやすい法律セミナー等を行っている。SASUKE2015本戦にも参戦した。弁護士YouTuberとしても活動を開始している。今年からXリーグにも復帰した。

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