環太平洋連携協定(TPP)の交渉で、各国の調整が難航しているといわれている知的財産権にかんする条項をめぐって、国内の大手メディアによる報道が二転三転している。
NHKは今年2月11日、TPP交渉についてのニュースで、映画や音楽などの著作権侵害があった場合、日本の現行法と異なる「非親告罪」にする方向で調整が進められていると、報じた。ところが、それから1カ月経った3月12日、今度は共同通信が全く逆の報道をおこなったのだ。
共同通信の記事によると、「映画や音楽などの著作権が侵害された場合に被害者の告訴がなくても政府が公訴を提起できる制度を、参加12カ国に一律に義務付けない方向で調整していることが11日分かった」という。
さらに続けて、この記事は「著作権侵害の公訴の仕組みがなく導入に難色を示していた日本などの意見を取り入れた。日本はTPPにより著作権の現行制度を変える必要はなさそうだ」と記している。
2月のNHKの報道をうけて、日本の著作権法も「非親告罪化」されるという危機感がネットなどで高まっていたが、今回の共同通信の報道を受けて、ツイッター上では「おお、これは良い話」「うお、助かった。交渉頑張ったな」などの反応があがっている。
●福井弁護士「確定情報を見るまで何も信じるな」
一方で、知的財産権に関するTPP交渉の透明化を求めている漫画家や弁護士などの専門家たちは、冷静な反応を示している。
漫画家の赤松健さんは、自身のツイッターで、「もし事実なら、我々大勝利!って感じなんですが、果たしてどうなるか」と反応。著作権にくわしい福井健策弁護士は「あるメディアは決まりといい、別なメディアは回避できるという。『確定情報を見るまで何も信じるな。そして休むな』ということでしょう」とつづっている。
ネット利用者の立場から意見をあげている一般社団法人インターネットユーザー協会の香月啓佑事務局長は、弁護士ドットコムニュースの電話取材に対して「ネタ元もわからず、条文がどうなるのかという具体的な説明もない。安心してはいけない。条文が公開されるまで、意見を言い続ける」と強調していた。
なお、赤松さんや福井さんたちのグループは明日3月13日、「TPPの知的財産条項に対する緊急声明」を発表し、東京都内で記者会見を開く予定になっている。