衆院議員の中川郁子農水政務官(56)が、自民党の同僚の門博文衆院議員(49)と路上でキスしている写真が、3月5日発売の『週刊新潮』に掲載されて、話題になった。
同誌によると、中川政務官の「上司」にあたる西川公也農水相(当時)が辞任した2月23日の夜、2人は、東京・六本木の路上で互いに身体を寄せ合ってキスを交わした。中川政務官は、2009年に急逝した故・中川昭一元財務相の未亡人で独身だが、門議員が妻子ある既婚者だったことから「不倫現場」として取り上げられた。
中川政務官は3月5日、「酒席の後とはいえ、私の軽率な行動により、みなさまに大変不快な思いをさせた」と謝罪コメントを出した。一方の門議員も「反省している」と謝罪している。
2人は路上キスについて事実だと認めているが、この「不倫」は法的に問題ないのだろうか。もし門議員の妻が、中川政務官に慰謝料を請求したら、認められるのだろうか。男女の問題にくわしい柳原桑子弁護士に聞いた。
●キスだけなら「不貞行為」といえない
「一般的には、配偶者以外と単にキスした場合でも『不倫』といわれますが、法律上は、肉体関係がある場合とそうでない場合で、評価が異なります」
柳原弁護士はこう切り出した。どういうことだろうか。
「法律上、既婚者が配偶者以外と肉体関係をもった場合は『不貞行為』(民法770条1項1号)にあたります。一方で、肉体関係はまったくなく、キスだけだった場合、『不貞行為』とまでは評価されません」
民法では、裁判で離婚が認められる条件の一つとして「不貞行為」をあげているが、そのなかに「単なるキス」は含まれないということだ。
「今回のケースでいうと、あくまで『キスだけ』だったなら、門議員の妻が裁判を起こして中川政務官に慰謝料を求めても、裁判所では認められない可能性が高いと思います」
しかし、キスという行為も『不倫』や『浮気』に含まれると考える人は多そうだが・・・。
「たしかに、今回のようなケースでは、妻が怒って、夫とキスした女性に慰謝料を請求するということもあるかもしれません。
裁判で、その請求が認められるかというと厳しいと思いますが、当事者間の話し合いのうえで、慰謝料を支払って解決するということはありえます」
●妻が「離婚」を求めたら?
では、今回のようなケースで、怒った妻が夫に対して「離婚」を求めたら、どうなるのだろうか。
「一般的に、夫婦の話し合いで合意に至れば、離婚することができます(協議離婚)。この場合には、理由は何でもかまいません。
しかし、夫が離婚に応じないために、妻が裁判を起こして離婚請求をする場合、たった一度のキスを理由とするだけでは、離婚は認められないでしょう。
ただし、キスが原因となって、夫婦関係が冷え切ってしまい、その後、『婚姻関係が継続できない』(同法770条1項5号)ほどに破綻したと認められる状況に至った場合、裁判所においても離婚を認められる可能性があります」
柳原弁護士はこのように述べていた。