インテリア大手「大塚家具」創業者の会長と、その娘である社長が、今後の経営体制をめぐって「骨肉の争い」を展開し、世間の耳目を集めている。3月下旬の株主総会に向けて、父親の大塚勝久会長は、娘の大塚久美子社長を退陣させることを株主提案した。一方、久美子社長も、勝久会長を取締役から外す提案をする予定であることを明らかにした。
勝久会長と久美子社長は、2月25日、26日にあいついで記者会見を開き、それぞれの「正当性」を主張した。それぞれが考える「新経営体制」は取締役の顔ぶれがまったく異なっており、どちらの案が採用されるかで、大塚家具の経営は全然違ったものになりそうだ。
両者は株主総会に向け、株主たちの支持を集めるべく動いているようだが、株式会社の経営体制は、どのように決まるのだろうか。また、取締役会と株主総会の関係はどうなっているのだろうか。企業法務にくわしい今井俊裕弁護士に聞いた。
●株主総会で、会社の運命が決まる?
「株式会社の意思決定の仕組みは、それぞれの会社が定めている『定款』によっても変わるのですが、あくまで会社法上の一般論としてお話します。
株式を上場している会社は、会社法上の公開会社となりますから、法令上、3人以上の取締役で構成される取締役会を設置しなければなりません。
会社の意思決定は、通常、この取締役会を構成する取締役の議決(多数決)で決まります。他にたとえば、だれを『代表取締役』にするかも、取締役会の議決で決まります」
つまり、『取締役会』が、株式会社の経営について意思決定する役割を担っているわけだ。
「そうですね。ただ、誰を取締役会のメンバーにするかは、株主総会の議決で決まります。その意味で『会社の経営体制は株主総会で決まる』ともいえるでしょう」
なぜ、株主総会で決まるのだろうか?
「そもそも、株式会社を所有しているのは『株主』ですから、誰に経営を任せるかを決めるのは株主の役割です。株式会社の経営者は、株主に対しては、会社の経営を預かる立場にすぎないわけです」
代表取締役が「その会社で一番えらい人」というイメージがあるが、代表取締役はじめ取締役は、株主に対しては「経営を預かっている」という立場というわけだ。
●取締役会が、代表取締役を監督する
代表取締役は、社内ではどんな立場なのだろうか?
「代表取締役は、文字通り会社を代表する立場ですが、好き勝手な経営をしていいわけではありません。
取締役会は会社の経営の方針を決定するだけでなく、代表取締役が法令や定款や取締役会の決議に違反していないかどうかを監督することが求められています。
代表取締役といえども、法令や定款や取締役会の決議に違反するような業務執行をすれば、取締役会の決議によって解職される、つまり『クビ』にされる可能性があります」
代表取締役といえども、取締役会には逆らえないわけだ。
「そうですね。たとえば、取締役があらかじめ申し合わせておいて、代表取締役解職の議案を取締役会に提示し、事前に練習したとおりの口上で解職の理由を述べ、『解職議案に賛成の方はご起立願います』と一気に議決して、代表取締役を解職に追い込む、なんていうことも不可能ではありません」
ずいぶんドラマチックなやり取りだ。
「そうですね。このようなケースは、現実にはそうそうないと思われますが・・・」
今井弁護士は、このように話していた。