凶悪な少年犯罪が起きると、しばし議論の対象となるのが少年の顔や氏名に関わる報道のありかただ。過去を振り返れば、1997年に神戸で発生した酒鬼薔薇事件で、逮捕された少年の顔写真が週刊誌『フォーカス』に掲載され論議を呼んだ。
また、最近では吉祥寺の街頭での女性刺殺事件で、雑誌『週刊新潮』が逮捕された少年2人の実名と顔写真を掲載している。これらが論議の対象となるのは、少年法61条によって、少年本人を特定できるような記事や写真を出版物に掲載することが禁じられているからでもある。
しかしながら、吉祥寺の事件に関して言えば、週刊誌が報じる前からすでに、少年の氏名や顔写真がネットに掲載され、ツイッターなどで広まっていたという。報道機関ではなく一般人が、逮捕された少年の顔写真をネットで流した場合、罪に問われることはあるのだろうか? 木下慎也弁護士に聞いた。
●少年法の趣旨は「一般人のネット利用」にもあてはまる
「少年法が犯罪少年の氏名や写真の報道掲載を禁止するのは、プライバシーを守って少年の更生を図るためです。したがって、一般人によるインターネットの利用にも、その趣旨は当てはまります。
ただ、同法には罰則規定がないので、少年を晒し者にするなど名誉棄損になるような不当な表現でなければ、罪にはならないと思います」
つまり、逮捕された少年の写真をネットで流すことは少年法に触れる可能性があるが、もともと罰則規定がないので、少年法で処罰されることはないということだ。
さらに、木下弁護士は少年法をめぐる今後の動きについて、次のように述べる。
「立法論として、犯罪少年の報道禁止の例外を設けようという動きもありますが、今後も少年による凶悪犯罪が続けば、掲載の規制は緩和されるかもしれません。安全な社会を守るためにも、正当な表現による検証は尊重されていく可能性があります」
少年法をめぐる議論は揺れ動いているが、現時点では、犯罪少年の写真掲載について少年法による規制があり、その趣旨はネットにもあてはまるということだ。その点は心に留めておきたい。