中東の過激派組織「イスラム国」が2人の日本人男性を人質にとって、身代金を要求する動画がインターネットで公開され、国内に衝撃が走っている。
動画に映っている人質は、昨年シリアで拘束された湯川遥菜さんと、フリージャーナリストの後藤健二さんとみられる。2人の間に立ったイスラム国のメンバーとされる男は、身代金2億ドル(約236億円)を日本政府に要求し、72時間以内に応じなければ2人を殺害すると警告している。
今回の事件を受けて、安倍首相は「許しがたいテロ行為」と非難したうえで、人質をただちに解放するよう訴えている。卑劣な犯罪行為といえるが、事件が起きているのは、日本国外で、犯人も日本人ではないとみられる。
このような場合、身代金を要求している男を日本の法律で裁くことはできるのだろうか。西口竜司弁護士に聞いた。
●「身代金目的略取罪」には日本の刑法が適用できる
「今回の事件のニュースを聞いたとき、『えっ!』と耳を疑いました。安倍晋三首相がイスラエルを訪問しているタイミングだったからです」
西口弁護士は驚きを口にした。日本の法律に照らし合わせると、今回の「イスラム国」メンバーの行動はどんな罪にあたるのだろうか。
「日本人2人を人質にした行為については、身代金目的略取罪(刑法225条の2)にあたります」
だが、今回の事件は、ほぼ間違いなく国外で発生している。このような場合でも、日本の刑法が適用されるのだろうか。
「一般的なイメージからすると、国内で起きた事件にしか、日本の刑法は適用されないのではないか、と思われるかもしれません。
しかし、刑法2条以下では、国外で事件が発生した場合でも、日本の刑法が適用される場合があると規定されています。一部の重大犯罪については、海外で日本人が被害者となった場合、日本の刑法が適用されるとしています。
今回の事件は、身代金目的略取罪にあたりますので、国外のテロリストにも日本の刑法が適用できることになります(刑法3条の2)」
現実的に対応できるかどうかはともかく、法律は適用できるようだ。
「日本国民にとって、他人事でない話だと思います。昨今の世界情勢に照らせば、いつテロリストに誘拐されるかわかりません。
その際、わが国がどのように行動できるのか、真剣に考えるときがきたようです。イスラム国の問題は対岸の火事ではないのです」
西口弁護士はこう警鐘を鳴らした。