企業や政府などの不正を「内部告発」しようとする人が、身元を知られずにジャーナリストに情報を伝えることができるサイト「whistleblowing.jp(内部告発.jp)」が運用に向けた準備を進めている。設立者の八田真行・駿河台大学専任講師は12月19日、早稲田大学でシンポジウムを開き、「内部告発.jp」の仕組みや利用法を説明した。
●最先端の匿名化技術「Tor」を活用
同サイトは、匿名化の技術システムを活用することで、内部告発者を保護する。内部告発サイトとしては、海外では「ウィキリークス」が話題になったが、日本でも最先端の匿名化技術を使った内部告発サイトが立ち上がったといえる。
内部告発.jpの最大の特徴は、送信者を匿名化する「Tor(トーア)」という技術を使っていることだ。インターネットを利用した通常の情報送信では、ネットにアクセスした人の身元を特定することが、技術的には可能だ。しかし内部告発.jpでは「Tor」を活用することで、送信者の身元の追跡を不可能にして、内部通報者の身に危険が及ぶことを防ぐ。
内部告発サイトを立ち上げた狙いについて、八田氏は「日本において、内部告発はネガティブな印象があるが、アメリカではウォーターゲート事件のようにいい印象もある」としたうえで、「内部告発は、健康診断みたいなものだ。STAP細胞などのスキャンダルでも、話がこじれる前に内部告発があれば、組織の存立が危うくなるところまでいかないだろう」と語った。
●内部告発.jpは「土管のようなもの」
内部告発.jpの役割は「内部告発者とジャーナリストをつなぐ土管のようなものだ」と、八田氏は説明する。あらかじめ、内部告発情報を受け取りたいジャーナリストが「受信者」としてサイトに登録。内部告発をしたい人が「送信者」としてサイトにアクセスして、情報を伝えたいジャーナリストを選んで、企業の不正行為などの情報を送る。
一般のメールなどと違って匿名化技術を使っているため、誰が送信したのかは分からない仕組みなのだという。内部告発.jpを通じて送られた情報は、2週間でサイトから消去される。告発情報を受け取ったジャーナリストは、その情報の真偽を自らの責任で判断したうえで、それぞれのメディアで報道することになる。
課題になっているのは、サイトの性質上、秘密情報を扱うことについての「法的なリスク」だ。12月上旬には特定秘密保護法も施行され、外交や防衛に関する国の機密情報流出に、以前よりも重い罰則が科されることになった。八田氏は「基本的には企業や研究機関からの内部告発を想定しているが、秘密保護法との関係でも、知る権利や報道の自由でカバーできると考えている」と語った。
現在、大手新聞紙の記者など15人のジャーナリストが、八田氏とともに立ち上げに関わっており、何人かは既に登録の意向を示しているという。今後、匿名化技術の研修を受けることを条件に、ジャーナリストの登録を進める。早ければ来年2月にも、運用を開始する予定だ。訴訟リスクなども考慮して、今後は運営主体を団体化することも視野に入れている。
http://www.slideshare.net/masayukihatta/mhatta-waseda20141219