「1票の格差」が最大4.77倍だった2013年7月の参院選。その合憲性が争われた裁判で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は11月26日、この選挙の定数配分が「違憲状態」だとしつつも、原告が求めた「選挙無効」は認めないという判決を下した。
この参院選については、弁護士でつくる2つのグループが全国各地の選挙管理委員会を相手取って、選挙の無効を請求する裁判を計16件起こしていた。
●6名の補足意見、4名の反対意見
原告の一人である升永英俊弁護士は判決後の記者会見で「人口比例選挙を否定する判決のことを、われわれは『ガリレオ判決』と呼んでいます」と語った。地動説を主張したガリレオ・ガリレイは、聖書に反するという理由で異端審問にかけられ、有罪判決を受けた。今回の最高裁判決は、それぐらいおかしいという意味だ。
ただ、原告たちは、判決を全く評価していないわけではない。
同じく原告の久保利英明弁護士は、今回の判決の一番大きな意義は「多くの補足意見、反対意見が出たことにある」と指摘した。
最高裁の大法廷判決は、15人の裁判官による合議制だ。今回の判決では、11人の裁判官が多数意見を書き、4人の裁判官が反対意見を書いた。また、多数意見のうち6人が補足意見を付けている。
久保利弁護士は「山本庸幸裁判官は、反対意見で選挙制度が『違憲』で『選挙は無効』だとしている。『違憲』で『選挙無効』の意見を最高裁の裁判官が書いたのは初めてだ」と指摘した。
さらに、補足意見の裁判官が「次の選挙でも、この意見のままとは限らない」と書いている点を挙げ、「(最高裁が)『選挙構造を変えない国会に愛想をつかした』という可能性が、大いにあると考えている」と、次なる展開に期待を述べた。
同じく原告の伊藤真弁護士は、12月に実施される衆議院総選挙に言及。「違憲状態だと最高裁が判断したままの状態で、次の衆議院議員選挙が行われようとしている」として、「この衆議院議員選挙にも厳しい司法判断が予想される」と述べた。
●最高裁裁判官の国民審査がある
升永弁護士は、衆院選と同日に実施される『国民審査』に、しっかりと参加するように呼びかけた。
国民審査は、国民が最高裁の裁判官を評価する仕組みで、有効投票の過半数が『×』だった裁判官は、強制的に辞めさせられる。今回の判決にかかわった最高裁裁判官のうち5人が、12月14日に実施される『国民審査』の対象だ。
升永弁護士は「(ガリレオが裁判を受けた)1633年のイタリアでは、裁判官の国民審査はなかった」が、現在の日本では国民が判決を評価するチャンスが与えられているとして、「国民審査で『×』をつけることで、『ガリレオ判決』を変えることができる」と指摘していた。