いたましい児童虐待事件が絶えない。11月上旬、札幌市で2歳の息子の首を絞めて殺害しようとしたとして、母親が殺人未遂容疑で逮捕された。家族は、この母親が「育児にかんして精神的に不安定だった」と話しているという。
この母親のように、育児の悩みや子どもへのいらだちがたまり、ある日突然、ストレスが限界に達して、子どもに暴力をふるうケースは少なくないようだ。逆にいえば、親が抱える辛さやストレスを解消できれば、虐待を未然に防げるケースもあるのではないだろうか。
育児に追いつめられ、「子どもを虐待してしまうかもしれない」という不安を抱えた父母が、助けを求められる場所はあるのだろうか。児童虐待にくわしい榎本清弁護士に聞いた。
●さまざまな「相談先」が用意されている
「相談する先として、まず、各市町村の保健所・保健センターがあげられます。
保健センターは新生児訪問を通じて、子育ての相談受け付けや情報提供を行っています。また、乳幼児検診などの際に、親子で立ち寄ることが多いので、相談もしやすいでしょう。
次に、児童相談所です。児童相談所というと、近隣からの通報を受けた職員が、親を指導するためにやって来るというイメージがあるかもしれませんが、親からの育児の相談も受け付けています。
各自治体の子ども家庭支援センターに相談してもいいでしょう。ここでは、育児相談のほか、同い年の子どもがいる親との交流サービスも受けられます。
その他、子育てや虐待に関する相談をメールで受け付けているNPO法人もあります」
榎本弁護士はこのように説明する。育児に悩む親が相談する先は、いくつも用意されているようだ。
「それぞれの機関は連携しているので、相談内容に応じて、より適切な機関・サービスを紹介してもらえます。いずれの機関も匿名で相談できますので、もし悩んだら、まずは相談することが大切です」
●児童虐待は「防止」が重要
「児童虐待は、子どもの心と身体に大きな爪あとを残します。
児童虐待が起きてしまった場合に十分なケアをすることは、もちろんとても大切ですが、虐待を未然に防ぐことがそれ以上に重要です。
行政もこの点を重視しており、虐待のリスク要因を持つ家庭の把握につとめるとともに、親の育児に対する不安や悩み、実際に虐待をしてしまうかもしれないという悩みまで、幅広く相談できる窓口を用意しています」
榎本弁護士はこのように話していた。