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「弁護士制度は誰のためにあるのか」司法試験「3000人合格」訴える弁護士らが集会
「弁護士の数」はどれくらいがいいのだろうか?

「弁護士制度は誰のためにあるのか」司法試験「3000人合格」訴える弁護士らが集会

法科大学院(ロースクール)の基盤強化や新人弁護士の支援を目的に、弁護士や学者らが設立した団体が10月27日、東京・霞が関の弁護士会館で、「司法試験の合格者3000人の実現」を訴える集会を開いた。企業や労働組合、NPOの代表などがリレー形式で話し、適正な法曹人口について議論した。

かつて年間500人程度だった司法試験の合格者数は、法科大学院制度の導入を契機として大きく増え、2000人規模まで拡大した。その結果、2000年に約1万7000人だった弁護士の数は倍増し、2014年には約3万5000人となった。そのような事態を受け、業界内部からは「弁護士の需給バランスが崩れている」「能力やサービスの質が低下している」として、「合格者数を1000人以下に減らすべき」という声もあがっている。

一方で、集会の主催団体「ロースクールと法曹の未来を創る会」は、日本の発展のためには、さまざまな分野の経験や能力をもつ法曹(弁護士・検察官・裁判官)をつくり出すことが必要だとして、合格者数を3000人に増やすべきだと主張している。

●「法曹の活動領域を広げる」

「幅広い知識と経験を有する法曹の活動領域を広げ、日本の社会を変えていこうと考えている。これまで、法廷弁護士だけが弁護士で、国民の相談にのったり、交渉をするのは弁護士ではないように扱われてきた」

冒頭のスピーチで、代表理事の久保利英明弁護士はこう指摘したうえで、次のように続けた。

「弁護士制度は、本来、人権擁護、公益の増進、社会の透明化をつくっていくためにある。弁護士の生活のためにあるわけではない。司法を小さく、あるいは弱く、国民から遠いものにしておきたいという人たちは既得権益者で、新しい未来を創っていこうという若い世代や真剣に物事を考えている人たちの考えとは違うと確信している」

早稲田大学大学院ファイナンス研究科の川本裕子教授は、グローバル経済の観点から、次のように話した。

「当初の計画は、2010年までに『3000人合格』にするという方針だった。これは、国際的にみて圧倒的に少ない法曹人口を、少なくともヨーロッパと同じくらいに引き上げるということで、国民や企業の紛争を未然に防ぐため、助言をしてくれるサービスを増やそうという狙いがあった。

グローバル経済の中で、企業同士のぶつかり合いを司法の場で決着させる機会が増えている。その観点からは、もとの3000人も少ないと思っている。国民目線の原点に立ち返っていただきたい」

●「企業内弁護士」という働き方

企業内弁護士という立場からの発言もあった。

寺尾滋久弁護士はアメリカのテレビ会社に勤めたあと、「ビジネスのさまざまな場面で、法的助言ができるエンターテイメント弁護士」を目指して、日本の司法試験に合格した。現在は社員20人ほどの映画配給会社で企業内弁護士をしているという。

弁護士の就職難が叫ばれていることについて、寺尾弁護士は「法律事務所への就職が念頭にある」と指摘。企業内弁護士が増えたといっても、まだ1200人程度、全弁護士のわずか3%であるとしたうえで、「中小企業には弁護士のニーズがある」と断言した。

寺尾弁護士は、契約書や刑事事件に発展しそうな問題、コンプライアンス・社内倫理など、広い分野にわたって、法律家としての素養を活かしながら仕事をしているという。「問題は、ニーズが掘り起こされていないことだ。開拓すべきフロンティアは目の前に広がっている」と述べた。

一方で、昨年から弁護士を雇用している医療機器販売のメディアスホールディングスの池谷保彦・代表取締役は「潜在的な問題やリスクが早い段階でみつかるようになった」と、メリットを強調。「企業を取り囲む環境が変化するなかで、法務リスクが増えている。小さいうちにリスクを摘んでくれる企業内弁護士のニーズが増えていくのではないか」と予想した。

●「若い弁護士は借金を返せるのか?」

会場からは、弁護士増員について懐疑的な声もあがった。

北海道・旭川の中村元弥弁護士は「地方は非常に経済的に疲弊している。たしかにニーズはあるかもしれないが、お金がちゃんとついてくるニーズかどうかが問題だ」と指摘した。

中村弁護士はそのうえで、「自由に競争するのは結構だと思う。私は2年連続して所得が300万円を切っていて、ほぼ道楽として弁護士をやっている。私は好きでやっているから、それでもいいが、若い人はこれで借金を返せるのか。それが地方の弁護士の実感だ」と話した。

そして、「運動として、『経済的側面』をもう少し考えていただきたい。たとえば、弁護士にお金を払えばこれだけいい仕事をするんだと、国民にアピールするような動きをしてもらえないか」と注文を付けた。

久保利弁護士は「(中村弁護士の話で)ポイントが非常にクリアになった」と発言に敬意を表したうえで、「弁護士制度は誰のためにあるのか。誰のために人数を決めるのか。それを決めるのは弁護士なのか。お金が儲かっているかどうかで数を決めるのか。クリアに論点として出てきた」と話した。

そして、「今日はみなさんの言葉に勇気づけられた。ただし、いろんな都合があったり、立場がある。きょうの議論をもう一度かみ直して、消化していただいて、ぜひ具体的な運動、行動として、本当に3000人実現するんだということをやっていきたい。この運動はずっと継続していくので、ぜひみなさんがたにも継続的なご支援をたまわれば、たいへんありがたい」と締めくくった。

(弁護士ドットコムニュース)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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