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「カジノの入場料設定は意味がない」 ギャンブル依存症を考える団体が「警鐘」鳴らす
「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子代表

「カジノの入場料設定は意味がない」 ギャンブル依存症を考える団体が「警鐘」鳴らす

カジノ解禁を目指す法案の成立に向けた動きが加速している。一方で、カジノ導入によりギャンブル依存症の人が増えるのではないかという懸念も根強くある。そんななか、「カジノ導入とギャンブル依存症対策」について考えるシンポジウムが10月16日、東京都内で開かれた。

主催した「ギャンブル依存症問題を考える会」の代表をつとめる田中紀子さんは、ギャンブル依存症の人について「ギャンブルの負けをギャンブルで取り返そうとするところがある」と述べ、「ギャンブル依存症者に数万円程度のカジノ入場料を設定しても、ほとんど意味がない」とカジノ推進派の対策案を批判した。

●外国よりも高い「ギャンブル依存症」罹患率

推定536万人。厚生労働省の研究班が推計した日本国内の「ギャンブル依存症者」の人数だ。田中さんはこの数字を紹介したうえで「諸外国の罹患率がほとんど1%前後であるのに対して、日本は特に男性が8.8%と、かなり高い罹患率だ」と説明した。

日本にカジノは存在しない。しかし、競馬・競輪といった公営ギャンブルがあるほか、宝くじやtoto(サッカーくじ)などの射幸性の高い娯楽が公認されている。田中さんによると、それらの粗利高は、合計で4兆9942億円にのぼるという。田中さんは「世界最大のカジノ都市」と言われるマカオの粗利額が4兆6104億円であることを引き合いに、次のように話した。

「これはもうすでに、日本の中にマカオのカジノと同じ規模の売り上げがあるということだ。その対策は、ほとんど何もされていない。世界最悪の『ギャンブル依存症罹患率』が発表されたのも、当然の結果だと思っている」

なぜ、ギャンブル依存症に陥る人が多いのか。その背景について、田中さんは「日本には、パチンコという身近なギャンブル文化があり、ギャンブルに対して親和性がある。ギャンブルの垣根が低い。私も高校時代からパチンコに行っていた」と語る。さらに、子どもがギャンブル場に近づけてしまう現状について、次のように述べた。

「競輪場や競馬場に行くと、ほとんどの場所で子どもの遊び場などが併設されていて、ファミリー連れを呼び込むことが、営業戦略として積極的にされている。なかには、特別観覧席にお子様連れを招待するという取り組みをしている競輪場もある。ギャンブル場に子どもを連れていくことをおかしいと思っていないのが、日本の国民性だ」

●カジノ入場制限は「ギャンブル依存症対策」として不十分

カジノ合法化に向けた議論では、ギャンブル依存症への対策として、依存症になった本人やその家族からの申告で入場禁止にできる措置や、入場料を高めに設定することなどが検討されている。しかし、祖父、父、夫がギャンブラーであり、自分自身もギャンブル依存症の回復者だという田中さんは、いずれの案も「ギャンブル依存症対策」として不十分だと指摘する。

「依存症は『否認の病』なので、本人の申告はあり得ない。そして、家族はギャンブルに気がつかない。ギャンブルはアルコールや薬物と違って、ふだんの様子がおかしいわけでもないからだ。私も10年間、夫のギャンブルの問題で苦しんできたが、夫がギャンブルをやっているということに全く気がつかなかった。大きな借金が出てきて気がつくという感じだった」

また、入場料を高く設定するという案については、田中さん自身がカジノにハマってしまった体験に触れながら、次のように話した。

「カジノにハマると、どんどん使う額が増えていってしまう。私は一晩で200万円を使ってしまったこともある。ギャンブル依存症者の特徴の一つに、ギャンブルの負けをギャンブルで取り返そうとするところがある。数百万、数千万を取り戻そうとしているギャンブル依存症者に対して、数万円程度の入場料を設定しても、それはほとんど意味がない」

田中さんはこのように述べ、カジノを解禁するかどうかにかかわらず、根本的なギャンブル依存症対策が必要だと訴えていた。

(弁護士ドットコムニュース)

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

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