道端でかわいい猫を見つけたとき、拾って飼いたいと思ったことがある人は少なくないのではないか。けれど、野良猫か、放し飼い中の飼い猫か、どこで判断すればよいのだろう。首輪がついていれば飼い猫と分かるが、首輪をつけない飼い主もいる。野良猫だと思い込んで、うっかり飼い猫を連れて帰るとやっかいだ。
ネットの相談コーナーにも同様の質問が寄せられている。「飼い猫か野良猫なのかは、首輪の有無で判断するのでしょうか?」。路上で野良猫らしき猫を見つけた質問者。首輪はつけていないが、毛並みが良く、汚れなどもないという。
もし、野良猫だと思っていた猫が、他人の飼い猫だった場合、拾った人は何らかの罪に問われるのだろうか。また、そもそも野良猫を自分のものとすることに、法的な問題はないのだろうか。ペットにまつわる法律問題にくわしい細川敦史弁護士に聞いた。
●飼い主のいない「野良猫」は問題ないが・・・
「飼い主のいない野良猫を拾って飼い始めても、法律上の問題はないでしょう。所有の意思をもって占有を開始することで、その猫の所有権を取得することになります。これを『無主物先占』といいます。
一方、逃げ出した猫や外飼いの猫を野良猫と勘違いして拾った場合ですが、誰かの飼い猫だと認識していなければ、原則として、刑事責任を問われることはないでしょう。
ただし、猫が連絡先の書いた首輪をつけていたり、猫の体が汚れていないなど、明らかに飼い猫である例外的な場合は除きます。そうした場合には、窃盗や占有離脱物横領の故意が認められる可能性も出てきます」
法的な問題はないにしても、飼っている間に、本当の持ち主が現れる可能性はある。
「もちろんです。飼い始めて愛着がわいた頃に飼い主があらわれて返還を求められ、お互い譲れない状態になるなど、トラブルの可能性はあります」
●猫を拾う前に「飼い主」を探す努力を
トラブル回避のために何かできることはあるだろうか。
「まずは、拾う前後に、近所にチラシを配るなどして、飼い主を探す努力をしましょう。また、警察に遺失物の届出をすることも大事な手続です。届出をしてから3カ月間、飼い主が現れなければ、猫の所有権を取得することができます。ただ、猫を飼いたいのであれば、外で自活できている猫を拾うよりも、別の場所から迎え入れてはいかがでしょうか」
どんな場所だろうか。
「各地の保健所や動物愛護センターに行ったり、行政主催の譲渡会に参加すれば、飼い主が見つからずに殺処分される運命の猫を救うことができます。
また、地域の広報媒体や、インターネット上の里親募集サイトを通じて個人や動物団体から譲渡を受けることも可能です。新たな飼い主を探している猫はたくさんいます。こうした方法も検討されてはいかがでしょうか」
動物を飼おうと思ったら、こうした方法もあるということだ。「ペットを飼う」というときには、自分の欲求だけでなく「小さな命を預かる」ことの意味を考えたいものだ。