ジャーナリストの池上彰さんが8月27日、中学生向けの講演会に登壇し、憲法問題について解説した。池上さんは「憲法は権力を持っていない人が、権力を持っている人を縛り付けるものです。これを『立憲主義』といいます」と分かりやすい口調で説明した。
講演会は、日本弁護士連合会が主催したもので、中学生とその親たちが参加した。池上さんは「お父さん役」になり、「お母さん役」の弁護士や「子ども役」の3人の中学生から質問を受けながら、憲法について語った。
●「テストの答案を捨てても、通知表で成績がバレる」
池上さんは、「立憲主義」の意味について、「北朝鮮の憲法では、朝鮮労働党のいうことを全て聞かないといけないと書いている。憲法の上に朝鮮労働党があります。また、中国の憲法には、中国共産党の指導に従うことが書かれています。これは『立憲主義』ではありません。日本ではどこかの政党が勝手なことはできません」と説明した。
また、特定秘密保護法が、憲法で保障された国民の「知る権利」に与える影響についても説明。「最長で60年が秘密になります。60歳の政治家は60年後には生きていないので、みんな秘密にしようとしてしまうかもしれない」と語った。さらに、中学生にわかりやすいように、「テストの点が悪くて答案用紙を捨てても、通知表のときに成績はバレてしまいますね。いずれ分かるのなら、隠さなくなります」「ニュースをよく見て、どうしたら良い運用ができるのか考えましょう」と噛み砕いた「池上流」の解説をした。
●安倍首相が憲法96条を改正しようとした理由
安倍首相の安全保障政策に関する動きについても解説。「安倍首相は憲法9条を変えて自衛隊を国防軍にしたいのですが、反対が多くてできません」。そこで目をつけたのが憲法の改正手続きを定めた憲法96条だったという。
現状では、衆参両院議員の3分の2以上の賛成と国民投票が必要だ。「だから彼は96条をかえて、過半数の賛成にしようとしました。しかし、憲法を変えろと言ってきた学者の中にも『それはおかしい』という人が出てきて、裏口入学みたいなものだと批判しました。そうすると今度は96条の改正を言わなくなって、集団的自衛権の憲法解釈を変えようという話になりました」と、今回の集団的自衛権の行使容認に至った流れを説明した。
米国との関係についても、「もともとはブッシュ政権の時代に集団的自衛権(の行使容認)をやってくれと言われた」が、「民主党(オバマ政権)はなんだか迷惑だと言うニュアンスを出しています。よその国との付き合いは大事だけど、ぶれない軸をもってないといけません」と独自の判断の重要性を語った。
●マスコミによって「世論調査」の結果が違うのはなぜか?
また、池上さんは、マスコミの世論調査のあり方についても言及。「毎日新聞や朝日新聞では集団的自衛権の行使容認を認めるべきではないというのが多いけれど、(逆に)読売新聞や産経新聞では、賛成意見の方が多くなりました」と指摘する。
「毎日新聞や朝日新聞は『賛成か』『反対か』で聞いていますが、読売新聞や産経新聞は、『賛成か』『必要最小限の集団的自衛権を認めるのは賛成か』『反対か』と聞いてます。これだと必要最小限ならまあいいか、というのが多くなるんです。聞き方によって賛成が多くなります」と世論調査の難しさを語った。
ただ、多くの戦争が「平和を守るため」を名目として起きていることから、「必要最小限とは何かを議論しなければなりません」と強調した。