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トップの責任の取り方とは――なぜ理研の理事たちは「辞任」しないのか?
理化学研究所の川合眞紀理事(左)と野依良治理事長

トップの責任の取り方とは――なぜ理研の理事たちは「辞任」しないのか?

「なぜ生前の苦しみを共有・緩和しつつ、悲劇的事態を回避できなかったか、悔恨の極みです」。理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの笹井芳樹副センター長の自殺について、理研の野依良治理事長は8月27日の記者会見で、このような後悔の言葉を口にした。

笹井氏は小保方晴子ユニットリーダーの指南役として、STAP細胞論文の科学誌掲載に大きな役割を果たした。そのため、STAP論文の不正疑惑が発覚したあとは、論文の共著者および副センター長としての責任を追及されることになった。

●「辞任したい」と上司に表明していた笹井氏

理研調査委員会による調査が進められていた今年3月には、責任を感じた笹井氏から竹市雅俊センター長に対して「副センター長を辞任したい」という辞意の表明があったとされる。しかし、結局、笹井氏は辞任することができないまま、自らの死によって職を離れるという悲劇的な結末を迎えた。

なぜ、笹井氏は辞任できなかったのか。記者会見でそのことをたずねると、理研の川合真紀理事は次のように答えた。

「笹井先生から副センター長の職を辞したいという希望が出ていたのは聞いている。そのときは調査委員会が走っている最中だったので、竹市センター長と研究担当理事の私と人事担当理事の3人で相談して、笹井先生も納得いただいて、副センター長の職は続けていただいた。ただし、過大な負担をかけてはいけないということで、実際には副センター長としての職務は少し軽減して、ご自身の研究室の運営に専念いただいたと聞いている」

笹井氏を辞任させなかったという判断に間違いはなかったのか。そう問うと、川合理事は「そのように思っている」と返答した。

●責任を問われても「辞任しない」理研の理事たち

辞意を表明しながら職を続けざるをえなかった者がいる一方で、「なぜ辞任しないのか」とつっこまれながらも、今の地位にとどまり続ける者もいる。

記者会見の質疑応答では、野依理事長に対して、「トップの責任の取り方として、アクションプラン策定のタイミングで幹部の一新をはかるという考え方もあると思うが、引き続き、野依さんが理事長をつとめたいというのはなぜか」という質問がぶつけられた。

それに対して、野依理事長は「理事長としてアクションプランの陣頭指揮をとるのが、私の責務だと考えている。下村大臣からもそのような指示を受けたので、この観点から全力を尽くしていきたい」と意気込みを口にした。

では、野依理事長や他の理事は、これまで一度も「辞任」を考えたことはないのだろうか。その点についてたずねてみると、野依理事長は困ったような表情を浮かべ、「答えにくい。私も2月から大変つらい思いで生きている。その中身はさまざまだ」と述べるにとどまった。

一方、川合理事は「私は、今回の事案を解決するなかで、試行錯誤しながら進めてきたこともたくさんある。まだ道半ば。私は責任をもって、きちんとやるべきことを果たして、きちっとした結果を残したいと思っている。それがいまの責任の果たし方だと考えている」と語り、辞任する意志はないことを明確にした。

もう一人、記者会見に出席した坪井裕理事は「再発防止策のとりまとめの担当をまかされており、与えられた責務をこなすことが基本的な役割だと思っている」と簡潔に説明した。

(弁護士ドットコムニュース)

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