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めったに見かけない「レア物」となった「2千円札」 店は受け取りを拒否してもよい?
九州・沖縄サミットをきっかけに誕生した2千円札

めったに見かけない「レア物」となった「2千円札」 店は受け取りを拒否してもよい?

最近、2千円札を見かける機会がほとんどなくなった。読売新聞によると、今年6月の2千円札の流通枚数(日本銀行調べ)は1億枚を割り込み、9900万枚だった。2000年の九州・沖縄サミットをきっかけに誕生してから15年目を迎えたが、2004年度以降は印刷されておらず、もはや「レア物」化しつつある。

読売新聞に掲載された事例では、東海地方のスーパー「ユニー」が店員の数え間違いを防ぐために、2千円札の取扱いを禁じる社内規定を設けているそうだ。2千円札を見慣れない客が多いという理由で、使用を禁止しているスーパーもあるという。

では、客から店員に2千円札を渡そうとした場合、その取り扱いはどうなるのだろうか。あるブログでは、店舗で2千円札を使おうとしたら「当店として使いようがない」と拒否された、という体験談が紹介されていたが、そのような店の対応は問題ないのか。最新テクノロジーも取り入れた「決済手段」の活用に取り組む三平聡史弁護士に聞いた。

●「法貨」の2千円札には「強制通用力」がある

「2千円札は、『政府レベルでのしくじり』と言われています。

2千円札は使いにくいから拒否するという店舗が増えると、ますます使いにくくなり、さらに拒否する人(店舗)が増える状況に陥っています。

世間では『まだ(消費税8%に対応した)108円玉のほうが使える』と言われるくらいdisられています」

散々な評価だが、受け取り拒否をしてもいいのだろうか。

「まず、支払いの流れについて考えてみましょう。

『売買代金』などの金銭の支払義務のことを、法的には『(金銭)債務』と言います。そして、通常は金銭で支払う(弁済する)ことになります。

金銭以外には、銀行振込や小切手という『支払金種』もあり、原則として支払い手段と認められています」

では、紙幣や硬貨はどう位置づけられているのだろうか。

「紙幣や硬貨については、『法貨』として法律上明確に保護されています(通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律7条、日本銀行法46条)。『法貨』には強制通用力があります。

一般的な金銭の支払いで『法貨』の受け取りを拒否すると、『受領拒否』となります。しかし、『法貨』は支払い手段として有効ですので、『法貨』を渡せば、『支払済み』と同じ扱いになるのです。つまり、受け取りを拒否することはできません」

なるほど、2千円札には法的な強制力があり、受け取りが拒否できないようだ。

●事前に客に告知していた場合は、拒否できる

「ただ、注意すべきポイントがあります。事前に店舗が『当店は現金は扱いません』とか『2千円札は扱いません』といった条件を告知していた場合です。

街中では、管理上のリスクを減らすために、現金を扱わない店舗も登場してきています」

事前に条件を告知することで、どう変わるのだろうか。

「法的には、当事者間で自由に条件を設定できる『契約自由の原則』や『私的自治の原則』があり、売買などの取引(契約)が成立する前に、支払方法を決めることが可能です。通貨の強制通用力も『契約自由』には勝てません。

支払方法の提示を見て会計する(レジに行く)ことで、『支払方法の提案を承諾した』=『合意した』ということになり、この条件は有効になるのです。

つまり、事前に条件提示があった場合、店舗側は2千円札を含めた『法貨』を拒否できます。支払いはクレジットカードやビットコインのみにするというのも可能です。

逆に、何の条件提示もなかった場合は、法貨の『強制通用力』が発動されて、受け取りを拒否できないということですね」

三平弁護士はこう締めくくった。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

三平 聡史
三平 聡史(みひら さとし)弁護士 弁護士法人みずほ中央法律事務所
早稲田大学理工学部出身の理系弁護士。”サイエンス、事業、労働、恋愛は適正な競争による自由市場により発展、最適化される”との信念で、新テクノロジー・ベンチャーの分野に力を入れる。twitterアカウントは@satoshimihira。

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